第123話 どうして今更……
「で、でも、あなたの復讐はもう終わってるんですよね。じゃあ、どうして今更……」
僕は、心の中に次々と沸き上がり続ける黒い何かを抑えながら、男性に向かって質問しました。今までの話を聞く限り、男性は師匠に対しての復讐を終えているはずです。それなのに、なぜ、師匠に再度の復讐をしようとしているのでしょうか。
僕の質問に、男性の目が、ほんの少し吊り上がりました。
「あいつがいなくなってからしばらくして、今度は俺や仲間たちが軍から追い出されたんだ。嘘の話で軍の士気を下げたって言われてな。せっかく戦争で稼いだ金も全額没収。きっと、あのクソ野郎が、仕返しで俺たちのことを上の人間に告げ口しやがったんだ。だから、もう一回復讐してやるのさ。今度は、前よりももっと残虐にな」
荒々しくなる男性の口調。もう、この様子では、話し合いでどうにかなるとは思えません。
…………って、あれ? 師匠が……告げ口?
男性の話に、ほんの少し違和感を感じる僕。師匠と僕は、長い付き合いがあるわけではありません。ですが、師匠がどういった人であるかは、弟子として把握しているつもりです。そして、少なくとも、僕の知る師匠は、他人の不幸を望んで告げ口をするような人ではありません。絶対に。そう、絶対に。
「えっと……」
僕が男性に声をかけようとしたその時でした。
ガラガラガラ。
大きな音とともに一瞬だけ明るくなる倉庫の中。おそらく、倉庫の扉を開けて、誰かが入ってきたのでしょう。ガヤガヤとうるさい話し声。現れたのは、男四人組。
「おー。見張り、ご苦労さん。昼飯、食ってきたぜ」
「ほい。お前の分の昼飯」
「ん? そいつ、やっと起きたのか。結構眠ってたな。二時間くらいか?」
「すまん。やっぱり、もう少し軽い睡眠魔法を使っとけばよかったな。あの野郎の弟子って聞いてたから、張り切りすぎちまったよ」
口々に言葉を放つ四人。僕を見下ろす彼らの顔には、気持ちの悪いニヤケ顔が浮かんでいました。
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