第68話 あま!

「僕もできました。どうぞ」


 僕は、出来上がったクッキーをお皿に載せ、テーブルへ。


 師匠の目が、キラリと光ります。一目散にお皿へ向かって手を伸ばし、クッキーを掴みます。そして、目にもとまらぬ速さで、それを口の中に放り込みました。


「おいしい!」


 師匠の声が、リビングに響き渡りました。


「えっと……私ももらっていいですか?」


「たくさんありますからね。旅人さんもどうぞ」


「ありがとうございます。じゃあ……」


 旅人さんは、ゆっくりとクッキーを手に取り、サクッと一口。そして……。


「あま!」


 目を見開きながらそう言いました。


「あー。甘めに作りましたからね」


「い、いやいや。これ、甘めどころじゃないですよ。あっまあまです」


 クッキーをまじまじと見つめながら、早口でそう告げる旅人さん。よほど味が意外だったのでしょう。まあ、これが一般的な反応ですよね。


「一応、普通に食べられるようにはしたつもりなんですが」


「そ、そりゃ、食べられないほどじゃないですし、何ならおいしいですけど。でも、これはあまりにも甘すぎますよ」


 僕自身、このクッキーは甘すぎると思っています。もし審査をするのが見ず知らずの人であったなら、僕もここまで甘いクッキーを作ろうとは思いません。ですが、今日の審査員は師匠です。だから……。


「この勝負、弟子君の勝ち!」

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