第49話 間に合ってよかった

 その声に、僕は目を開きました。僕の視線の先。地面に落ちる寸前の郵便屋さん。ですが、その動きは止まっています。郵便屋さんの周りには青白い光。


「……え?」


 声のした方を見ると、そこには、杖を持った師匠。杖の先からは、青白い光が放たれています。


「配達終わってから、急いで弟子君を追いかけて来たんだけど……。まあ、とりあえず、間に合ってよかった」


 そう言いながら、師匠は、杖をゆっくりと下に向けます。それに反応するように、郵便屋さんの体は、ゆっくりと地面へ下りていきました。







「郵便屋さん!」


 僕は、地面に降り立つと同時に、ほうきを投げ出して郵便屋さんの元へ。


「郵便屋さん! 聞こえますか!?」


 僕の言葉に、郵便屋さんは何も反応してくれません。ただ、「はあ、はあ」と荒い呼吸を繰り返すばかり。


 思わず郵便屋さんの頬に手を当てる僕。


「うわ!?」


 そのとんでもない熱さに、僕は思わず手を引っ込めてしまいました。


 まさか、最近町で流行ってるっていう風邪? でも、いきなり意識を失うなんて……。もしかして、風邪以外の何か……?


「……弟子君は、会社に戻ってこのことを報告してきて。私は、この子を病院に連れて行くから」


 早口でそう告げる師匠。郵便屋さんを見つめるその表情はとても険しく、まるで怒っているかのようでした。

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