第48話 郵便屋さん!

「まあ、とりあえず、今すぐ師匠に告白しようとは思ってません。ちゃんと力をつけて、それからしようと思ってます」


「…………そっか。いつでも相談にのるから。頑張って」


「はい」


「あ、さすがに長話しすぎたね。そろそろ行かないと」


 僕と郵便屋さんは、再び、二つ隣の町へ向けてほうきを走らせました。遅れを取り戻そうと、どちらからともなく速度を上げます。前から後ろに向かってあっという間に流れていく景色。風にあおられてパタパタと激しく音をたてる僕のローブ。


「ボクだって本当は弟子ちゃんのこと……」


 不意に、並走する郵便屋さんが何かを呟きました。ですが、よく聞き取れません。先ほどよりも速く飛んでいるせいでしょう。


「郵便屋さん、何か言い……え?」


 横を向く僕。その視線の先。本来なら、ほうきに乗った郵便屋さんが並走しているはずです。ですが、僕の目に映ったのは、全く別の光景。


 上半身がグラリと傾き、今まさにほうきから落下しようとする郵便屋さん。


「郵便屋さん!」


 僕は、グッと手を伸ばします。郵便屋さんを助けなければ。僕の頭の中には、それしかありませんでした。


 ですが、悲しいことに、僕の手は空を切りました。落下する郵便屋さん。それは、まるでスローモーションの映像を見ているかのよう。ゆっくり、ゆっくり、地面までの距離が近づいていきます。もしかしたら郵便屋さんは意識を失っているのでしょうか。叫び声は全く聞こえませんでした。


 なんで!?


 なんで!?


 なんで!?


「郵便屋さん!」


 ほうきを急降下させながら、再度、僕は叫びます。ですが、僕にはもうどうしようもありませんでした。もうすぐ、郵便屋さんは地面に落ちてしまうでしょう。それが何を意味するのか、想像に難くありません。


 僕は、ギュッと目を瞑って……。


「何やってんの」

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