第46話 今、疲れてる?

「そうかもね」


 僕の話を黙って聞いていた郵便屋さん。その口から放たれた言葉は、とても冷淡なものでした。ですが、驚きはありません。だって、それは真実。僕が、何度も何度も自覚してきたことだったのですから。


「弟子ちゃんは、魔女ちゃんに比べて、魔法の技術は劣ってる。それこそ、天と地の差っていう言葉が当てはまるくらい。だから、対等でいられるだけの力がないっていう弟子ちゃんの言葉は正しいよ」


「……知ってます」


「でもね、一つ見落としてる」


「……え?」


 思いもよらない言葉に、僕の体がピクリと反応します。目の前の郵便屋さんは、今まで見たことがないほど真剣な表情をしていました。


「弟子ちゃんには、魔女ちゃんとは違った力があるんだよ」


「違った……力?」


「うん」


 力強く頷く郵便屋さん。ただ僕を慰めようとしているだけというふうには見えません。心からそう思っている。言わずともそれが分かりました。


「それは……どんな……」


「そうだなー。…………ねえ、弟子ちゃん。今、疲れてる?」


「……へ?」


 いきなりの話題転換。僕の頭は全くそれに追いつきません。思わず、間抜けな声が出てしまいました。


「いいから答えて。郵便の仕事して疲れた?」


「まあ……そうですね。死にそうなくらいには」


「ありゃりゃ。まあ、ボクもだよ。今日もそうだけど、毎日毎日激務でさ。仕事はやりがいもあって楽しいと思えるんだけど、疲れは溜まる一方なんだ」


「……でしょうね」


「でも、疲れが吹っ飛ぶ瞬間っていうのもあってね」


 そう言って、フッと優しい笑みを浮かべる郵便屋さん。その視線の先には、何も分かっていない僕。


 郵便屋さんは、こう続けました。


「弟子ちゃんに会った時だよ」

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