第44話 楽しい?
「フンフンフーン」
鼻歌を歌いながらほうきで空を飛ぶ郵便屋さん。横目でチラチラと郵便屋さんを見ながら並走する僕。
いつもであれば、こんなに警戒することはありません。ですが、昨日が昨日ですからね。何かされてしまうのではないかと不安になってしまうのです。
「ねえ、弟子ちゃん」
「ひゃ、ひゃい!」
「……どうしたの? 様子が変だけど」
「か、勘違いじゃないですかね。ハハハ」
「…………?」
郵便屋さんは、首を傾げながら訝しげに僕を見つめます。郵便屋さんの視線の先。僕は、きっと、とても挙動不審に映っているんでしょうね。
「そ、そんなことより、どうしたんですか?」
「ん? ああ。楽しいねって言おうとしたんだよ」
「楽しい?」
「うん」
笑顔で頷く郵便屋さん。
この時、僕の頭の中には、師匠が言ったあの言葉が思い浮かんでいました。
『まあ、あの子は、仕事を楽しんでるんじゃないかな』
……やっぱり、郵便屋さんは超人でしたか。僕にはどこが楽しいのかさっぱりですが。
「……本当に、楽しいよ」
郵便屋さんは、小さくそう呟きました。まっすぐに僕を捉える瞳。いつの間にか、郵便屋さんの周りには、どこか妖艶な雰囲気が漂っています。それは、昨日、僕が見た光景と似通っていて……。
郵便屋さんは、上空でほうきを停止させました。つられるように、僕もほうきを停止させます。冷たい風が、フワリと僕の頬を撫でました。
「……弟子ちゃんはさ」
「……はい」
「…………」
「…………」
郵便屋さんは、言葉を紡ぎます。僕の、予想だにしなかった言葉を。
「いつ魔女ちゃんに告白するの?」
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