第41話 マジだよ

「……死にそう」


「弟子君、大丈夫?」


「……大丈夫に見えますか?」


「全然」


 とある公園のベンチ。僕は、ベンチの背もたれに自分の背を預けながら、「はあー」と大きなため息を吐きました。一瞬、公園にいた子供たちが、「何だこの人?」とでも言いたげな視線を僕に向けます。ですが、すぐに興味がなくなったのか、僕から視線を外し、楽しそうに遊具で遊び始めました。


 しかしながら、ここまで仕事が大変だったとは。いや、大変なのは承知の上でしたが、僕の想像をはるかに超える大変さに、体がもう悲鳴を上げています。


 とてつもなく広い地域をほうきで飛び回り。タイムリミットまでに郵便物を配達し。理不尽なクレームにもペコペコ頭を下げ。


 いやはや。


 いやはや、いやはや。


 …………


 …………


 オシゴト、コワイ。


「それにしても、郵便屋さんはすごいですね。こんな忙しい仕事を毎日こなしてるなんて」


「ははは。まあ、あの子は、仕事を楽しんでるんじゃないかな」


「……え?」


「昔からそんな感じだったしね。仕事命、みたいな」


「……マジですか」


「マジだよ」


 要するに、郵便屋さんも師匠と同じく超人だったというわけですね。


「そういえば、僕、師匠と郵便屋さんの昔の話、詳しく聞いたことないですね」


 それは、ふと頭に浮かんだ疑問でした。師匠と郵便屋さん。二人が長い間交流している仲であることは知っていましたが、具体的にどんな交流をしていたのか、僕は知らないのです。


「…………秘密」


 僕の頭の上。三角帽子が、小さくそう呟くのが聞こえました。


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