第27話 ボンッ!

 さて、シチューを作ることになった僕と師匠ですが……。


「し、師匠! 野菜を洗うのに洗剤は使いません!」


「包丁を逆手で持たないでください! それは人を殺す時のやつです!」


「ひ、火が! 火が強すぎます!」


 …………


 …………


 疲れました。


「うん。美味しそうな匂いだね」


 鍋をかき混ぜながら、ニコニコと微笑む師匠。確かに、キッチンはとてもいい匂いで満たされています。鍋の中には、綺麗な白色のシチュー。シチューの海に浮かぶのは、煮えて柔らかくなったニンジンやタマネギ、そしてジャガイモ。完成はもう目前です。


 まあ、いろいろありましたが、さすがにもう疲れるようなことはないでしょう。


「弟子君。棚からお皿出して」


「分かりました」


 僕は、鍋をかき混ぜている師匠から離れ、食器を入れてある棚の方へ。棚の中から木製の皿を二枚取り出し、再び師匠の所へと……。


 ボンッ!


 …………


 …………


「……へ?」


 幻覚でしょうか。鍋から紫色の煙が出ているような気が……。


「あ、あれ? なんで?」


 困惑する師匠の右手には、どうしてか、紫色の液体の入った瓶が握られていました。何だか見覚えがあるような……。


「し、師匠? そ、その瓶は?」


「えっと……ついこの前、気まぐれで買った魔法薬なんだけど」


「……その効果は何ですか?」


「……料理にかけると栄養バランスが良くなるっていうやつだよ」


 ……………


 ……………


「それ、めちゃくちゃ料理がまずくなるって、町で有名ですよ……」


「え……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る