第18話 むぎゃ!
あれからどれくらい時間が経った頃でしょうか。
「……師匠!」
僕は、小さくそう叫びました。
岩陰から湖の方を見つめる僕。その視線の先には、一人の少女。年は、僕よりも下でしょうか。軽くウェーブのかかったブラウンヘアー。その体にまとうのは、ベージュ色のワンピース。彼女は、湖に向かって手を伸ばしています。その手に握っているのは、魔法使いの必需品である杖。
これはもう確定でしょう。
「師匠、どうします? …………師匠?」
一体どうしたことでしょうか。先ほどから師匠が何も言ってくれません。不思議に思って師匠の方に顔を向ける僕。僕の目に映ったのは、幸せそうな表情でうたた寝をする師匠の姿。
「……こんな時に寝ないでください!」
「むぎゃ!」
僕のチョップが師匠の頭に炸裂しました。効果は抜群のようです。
「うう……弟子君、起こし方が乱暴だよ……」
「すいません。でも、今はそれどころじゃないんです」
「あ、もしかして、もう来たんだ。てっきり、夜までかかるかと思ったのに」
そう言って、師匠は、岩陰から湖の方を覗き見ました。
「ふむふむ。あの子に間違いなさそうだね」
「師匠、どんな作戦でいきましょうか?」
ここで油断してはいけません。相手は、湖の水に細工を施した魔法使い。その目的は分かりませんが、魔法に長けている可能性はかなり高いです。ここは慎重に行動をする必要があります。
まずは僕が囮になって……。いや、僕じゃ絶対敵わないだろうし……。でも、師匠が危ない目に合うのは嫌だから……。ううん……。
必死に作戦を考える僕。そんな僕に向かって、師匠は笑顔でこう言い放ちました。
「弟子君、今からあの子を捕まえてきて」
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