第3話 三日月



ケンカをしたわけではないけど、なんとなく彼と気不味くなってから、何度かメールを送るけど、返信が来なくて。


仕事から帰ってから、5日ぶりに彼のアドレスにメールを送る。


たった1行。


「もう、終わりかな」



そう打ってから、しばらく送信を押せなかった。


怖くて。


彼からの返事はもうわかっているはずなのに、それを知るのが怖かったから。


やっと決意して、送信のボタンを押す。



すぐにスマホを閉じて、バスルームに向かった。




いつもよりゆっくりお湯に浸かり、時間を潰す。



やっとバスルームから出ると時計は11時を過ぎていた。

頭にバスタオルをかぶせて、テーブルに置いたスマホが気になるけど、そのまま冷蔵庫の前に行き、缶ビールを取り出す。



歩きながら缶ビールのプルトップを開ける。

テーブルの上のスマホをチラッと見て、そして窓辺に座る。


窓を開けると、涼しい風が部屋に入ってきた。


お風呂上がりの顔にあたり、なんだか気持ちがいい。


街の灯りがポツポツと見える。


明るい街の夜空には黄色く光る細い三日月が夜の街に馴染んでいる。



ビールを口の中に流しながら、窓から夜の風景を眺めていたら、不意にポロっと涙がこぼれていた。



指ですくい取る。


それからはポロポロと涙がこぼれて止まらなくなった。




やっぱりまだ好きなんだ。





自分の気持ちにはっきりと気づいて、なんだか自分の未練がましさがおかしくなって、涙をこぼしながら笑っていた。


両方の目から流れこぼれる涙を手でぬぐい、ビールを一気に口の中に流した。


夜の風がビールで赤くなった顔を優しく撫でて吹いている。



黄色く光る三日月は夜の街に馴染んでいた。









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