第25話 2回もしくじった古澤倫太郎

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 4人は心ゆくまで俺の匂いを嗅ぎ続けた。有紗と真礼は俺の家に入り込んだり、京子さんは直接自分の家に呼んで匂いを日常的に嗅いでいるからある程度耐性はついている。けれど、内藤先生まで……


 時間が経ち、興奮が収まった内藤先生は、自分の過去を包み隠さず全部話してくれた。


「私の性格のせいで、3人に迷惑がかかったなら謝る……」


 そう跪いて謝ってくる内藤先生を咎めることなんてできない。なので俺は内藤先生に慰めの言葉をかけてあげることにした。


「い、いいえ。俺こそ、内藤先生のこと何もわからず、無理やりあんなことを……むしろこっちこそすみません」

「ううん。いいの。それに……」

「ん?」

「……」


 内藤先生は何かまずいことでも思い出したのか、急に視線を逸らし、もじもじしている。そこへ待ってましたとばかりに京子さんが突っ込んでくる。


「古澤くんの匂い、癖になっちゃうよね?」

「ん!……そ、それは……」

「素直になりなさい。私も娘もはまるほどだもの……内藤が我慢できるわけないよね?」

「……」

「何?もしかして、古澤くんの匂い、もう永遠に嗅がなくても良いとでも言いたいわけ??」

「そ、それは……」

「さあ、素直になりなさい……ふふ」

 

 モジモジしている内藤先生に体を密着させながら説く京子さんの姿は、とても蠱惑的こわくてきだ。


 その姿に俺と有紗と真礼は圧倒されてしまう。


「うう……でも、京子さん……恥ずかしいです」

「良いのよ。古澤くんなら全部受け入れてくれるから」

「……でも、古澤は生徒で、私は、先生……」

「匂い嗅いで、甘えるのに先生も生徒も関係ないわ。なんの問題にもならないから、素直にありのままの自分を曝け出しなさい」



 いや、京子さん?先生と生徒で匂い嗅いだり甘えたりするのは、ちょっと問題あると思いますけど?


 けれど、この学校にものすごい影響を及ぼしている理事長の妻からお墨付きをもらったのだ。内藤先生の顔は、次第に変化する。


 やがて、俺に向き直って、口をもにゅらせるが、なんとか声を振り絞って話し出す。


「匂い……また嗅いでもいい?」

「は、はい……俺のでよければ……」


 正直、有紗と真礼が見ている前だから当然断るべきだったが、目を潤ませて、ものねだる時の子供みたいな可愛らしい表情をむけてくるものだから、条件反射的に許諾してしまった。


「倫太郎……真礼のお母さんに風紀委員の顧問である内藤先生まで……随分モテモテじゃない」

「倫太郎くん……あまり鼻の下伸ばしても良いことないから……」

 

 二人がものすごい形相で俺を睨んできた。


「いやこれはあれ……内藤先生を味方にすることで、二人とよりくんかくんかするための……」





「言い訳禁止よ!」

「言い訳するな!」





「ヴア!」






 今日の俺は、2回もしくじってしまった。







追記




匂い嗅ぐだけだから何の問題もありません。


健全な遊びなのです。

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