なんでも2番目の幼馴染を甘やかしたら、学校一の美少女が告白してきた

なるとし

第1話 神崎有紗と朝比奈真礼という美少女

 俺の名前は古澤倫太郎。見た目も普通、成績も普通、交友関係も普通の高校2年生。逆に目立ったところがなさすぎて困るレベル。それが俺だ。今日は、中間テストの結果発表があったので、クラスにはどよめきが走っている。その中でも特に目立つのは二人の美少女。



「神崎さん、また2位ですって?」

「ぐぬぬ……」

「ほほほ〜やっぱり神崎さんはいくら頑張っても私には敵わないみたいね」

「次のテストでは必ず勝つから」

「まあ、夢見るのは自由だからね。叶わない夢だけど」

「ん!」


 思いっきり煽り文句をぶっ放しているのは朝比奈真礼あさひなまあや。外見も学校一、成績も学校一、家柄も学校一である彼女は、外見も二番目、成績も二番目の神崎有紗に向かって、いつもの挑発じみた言葉を吐いている。


 クォーターということで、柔らかそうな地毛である金髪を手櫛ですいた朝比奈真礼は日本人離れした整った目鼻立ちの顔で、神崎有紗に意地悪な視線を送る。


 透明な青色の瞳を向けられた神崎有紗は、悔しそうに朝比奈真礼を見つめている。神崎有紗は肩まで届く黒髪を靡かせ、切れ長の目と小さな顔は、遠くから見ても綺麗である。ずっと、家が隣同士だったから、神崎有紗の顔は少なからず見てきたつもりだけど、そんな幼馴染というフィルターを通しても、神崎有紗という女の子は綺麗に映る。


 派手な学校一美少女となんでも二番目の清純派美少女。


 いがみ合う二人にクラスのみんなが当惑する。


「お、おい倫太郎……そろそろ止めに入った方がよくない?」


 クラスの雰囲気を案じて、友達である野原成幸が話しかけてきた。


「ああ……その方が良さそうだな。あれは、ほっとくと一生終わらないやつだ」


「くう……羨ましい!神崎さんと幼馴染だなんて……しかも家も隣同士……まあ、あれは確かに止めないといけないんだけど、倫太郎だけがあの争いを収めることができるなんて……なんだか納得いかない」


「俺もできるものならやりたくないんだよ」


 そう。普段から目立たないことを心がけている俺からしてみればあまり気乗りしない作業である。そう思いつつ、凄まじい口喧嘩を繰り広げている二人をみるともなく見ていると、突然、一人のイケメン男が割って入って、二人の美少女の肩を軽くタッチする。


「なあ、二人ともそろそろやめた方が良くない?クラスのみんなもいるわけだし。なんなら僕が相談い乗ってあげようか?可愛い子猫ちゃんたち」


「おう!倫太郎!今回はクラス内におけるうざいイケメンナンバーワン木手山もてやまモテルくんに先をこされたね」


「まあ、どうでもいいけどな」


「楽しそうだから静観するとしよう!」


 と、野原は目を光らせて神崎有紗と朝比奈真礼と木手山もてやまモテルの絡みを興味深げにみる。


 まあ、結果は同じだと思うんだけどね……


 ほら


「はあ?気安く話しかけないでくれる?本当、キモいんだけど?ねえ?神崎さん?」

「ええ。ていうか、今どこ触ってるの?許可もなしにいきなり女の子の体をいやらしい手つきで触るなんて、本当クズの中のクズね」

「ウチのお父さんはこの学校の理事長なの知っているよね?学校行きたく

ないの?」


「あ、あはは……調子に乗りました!すみません!僕が悪かった!」

 

 木手山もてやまモテルは冷や汗をかきながらトンズラする。ていうか、こんな時は息ぴったりだな……あの二人


 神崎有紗と朝比奈真礼は木手山もてやまモテルなんか見向きもせず、またお互いを睨みつける。


「倫太郎……悔しいけど、お前の出番だ」

「はあ……」


 俺は深々とため息をついてから、椅子から立ち上がった。そして、ものすごい形相をしている二人のいるところへと重幅ったい足を動かした。


「そんな上から目線で見下すのも今のうちよ」

「あら、私は見下したことなんか一度もないわ〜factを言っただけだもの〜おほほほ〜」

「もういいだろ。このままやりあってもストレス溜まるだけだぞ」

「古澤くん……まあ、そうね……調子に乗ってて態度もでかい朝比奈さんと言い争っても、時間の無駄なだけだわ」

「まあ、確かに私は色々デカいけど、小さい神崎さんにはいくら話しても時間の無駄かしら〜」


 朝比奈真礼は殊更に胸を逸らして、その大きな二つの脂肪の塊を自慢げに見せびらかす。


「んんんんんん!!!朝比奈さんよりは小さいけど私も結構……」

「だあもう!やめて!二人とも!」


 試験結果が発表される日はいつもこんな感じだ。俺は神崎有紗の腕を掴んで引き離した。


「へえ」


 と、言って俺を朝比奈真礼は意味ありげな面持ちで見ているが、今はそんなことを気にしている場合ではない。あの煽りが大好きな朝比奈真礼からいち早く距離を取るべきた。


 争いをやめさせる最も効率のいい方法は実は簡単である。争いの原因となる因子を素早く取り除く。つまり、二人は離れ離れにすれば一件落着だ。まあ、明日も似たような感じでやりあうだろうけど……


 やがて担任先生がやってきて、どうでもいい連絡事項ダラダラ話すと、放課後となる。


「倫太郎!行こうか!」

「ああ」


 俺と野原は各々のリュックを背負い、教室を後にしようとする。他の生徒たちが「今日カラオケいく?」だの「今日はクリスピーが安いんだ」だの、間伸びした声で会話を交わしている。


 そんなどうでもいい会話を聞きつつ、俺と野原が戸口に差し掛かろうとした瞬間、後ろから誰かが俺の裾を引っ張ってきた。なんぞやと、後ろを振り向くと、神崎有紗がバレないように細くて白い指を使って、出てきた俺のYシャツの裾をぎゅっと握り締めていた。だが1秒も経たないうちに神崎有紗は指を離し、キョロっとした表情を浮かべる。


 顰めっ面の俺は、出た裾をいそいそと入れては、野原の跡を追った。


「な!倫太郎。今日もゲーセン寄る?」

「俺もそうしたいんだけど、残念ながら別の用事があってだな」

「ほお……いつも暇を持て余している倫太郎らしくない返事ね。まあ、試験の結果発表日はいつも直帰だったもんな。あ〜ゲーセン終わったら駅前に出来た「いきなりタコ焼き」に行くつもりだったけどな〜誰と食べればいいんだうな〜せっかく無料クーポンもあるのに〜」


 野原はわざとらしく「いきなりタコ焼き」の無料クーポンを取り出しては、それをパタパタと旗めかせる。


「……どうせ食べるだけならさほど時間かからないから、ゲーセン行く前に寄るんだったら一緒に行ってあげてもよろしくてよ?」

「倫太郎……お前、態度変わりすぎだろ。まあ、ゲーセン終わったら食うつもりだったけど、いっか」


 俺と野原は駅前のタコ焼き店めがけて歩調を早めた。




古澤倫太郎の家


 


「いきなりたこ焼き」は、無料クーポンという餌に釣られた客で混み合っていたため、結局30分も待たされた。なので、ものすごい勢いでタコ焼きを平らげて家に帰ったのだが、玄関前では見慣れた美少女一人が仁王立ちしていた。そして開かれる口。


「遅い」

「……」

「倫太郎の分際で私を30分も待たせるなんて」

「あのさ」

「何?」

「なんで有紗がここにいんの?ここ、俺の家だぞ?」




 


追記



 短編小説という位置づけです。

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