スローライフが希望なんですが....

ワラビ 

第1話 はじまりの鐘

会社からの帰り道のことだった。

「やめてください!!」

路地のほうから女性の声が聞こえてくる。

この道は普段使わない。今日は、運良く早帰りでき気分が良かったので、散策していたのだが。

(なんだ、痴話けんかか?)

余計なことに首を突っ込まないほうが吉だな。そう思って通り過ぎようとしたのだが、

「やめてっ!」

悲痛な叫び声が聞こえてきた。さすがに、様子だけは見に行くかと思い路地のほうに舵を切る。

しばらくすると、さっきよりも声が大きく聞こえるようになり、いやな予感がして小走りで進む。

案の定、20歳ぐらいの女性がかばんをひったくられそうになっていた。

俺は、条件反射で男にアタックした。初めてのことだったが、うまく意表を付けたので男は体制を崩す。

その隙に、女性とかばんを回収する。その間に、男も体制を整えていたが不利と感じたのか逃げていった。

「ふぅ~」

息をはく。さすがに緊張した。

「すいません、ありがとうございました。」

「いえ、気にしないでください。」

「でも..」

「それよりもケガとかは大丈夫ですか?」

「は、はい。」

「そう、良かった。なら、もう行くね。急ぎの用事があるから。」

「えっ。せめてお名前だけでも。」

「いいよ。気にしないで」

女性にそれだけ言うと俺は、そそくさと退散する。

別に用事はないがせっかくの金曜日でしかも早く帰れるのだ。家でゴロゴロしたい!

その一心で家に帰る。


家に着くと素早くラフな格好に着替えて布団にもぐる。

「よーし、今日はたまっていたアニメを全部見るぞー!」

と、意気込んだのはいいが1時間後には夢の中だった。


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