第9話_カイトの昔話1
入浴を終えた2人は、パジャマがわりの浴衣に着替えて並んでソファーに腰掛けた。
「お嬢様、先ほどのお話しについて、少し長くなるのですが、聞いていただけますか?」
「ええ、もちろん。」
(カイトの昔話)
昔、フェアリナイト起こった大惨事。
きっかけはとある貴族令息の皇女への横恋慕だった。
皇女には仲睦まじい婚約者がいて、他の者が入るような隙はなかった。
皇女とある貴族令息は同じ学校に通っており、貴族令息は叶わなくとも、想いだけでも伝えて諦めようとする。
その道すがら、黒い服を着た魔道士風の男に、貴族令息は怪しい薬を提供される。
『これを意中の相手に1滴飲んでもらえば、君の想いが伝わるよ。おまじないみたいなものだから、軽い気持ちで使ってよ。』
貴族令息は少し訝しんだものの、『自分の想いが伝わるおまじない』という言葉が非常に魅力的だったので、その薬を1瓶入れたクッキーを用意して、皇女に告白した。
「あなた様のことがずっと好きでした。あなた様が私の想いを受け入れて下さらないことは存じております。私があなた様を諦めるために想いを伝えさせていただきたいのです。
私の想いの代わりに、ささやかですがこのクッキーを一口お召し上がりいただけないでしょうか?それで私は満足してあなた様を諦めると誓いましょう。
毒見はここで私が行います。サクッ ほら、大丈夫でしょう?」
皇女は毒見を見て安心し、そういうことならとクッキーを1枚食べた。
「美味しかったわ。ありがとう。これで失礼するわね。」
立ち去ろうとする皇女。そこに貴族令息が声をかける。
「待ってください」
すると皇女の足が動かなくなった。
「私の足が動かないわ、どうして!?」
貴族令息はおまじないに使った薬の効能を知った。
これが悪夢の始まりだった。
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