古巻視点
第146話 6月22日 久しぶりの幼馴染
今日は久しぶりに幼馴染の2人と遊ぶ約束をした。
舞曰く、凪から許可をもらったから強制だとか……。
遊ぶ本人よりも先に他の人にアポを取ることはあるのだろうか――いや、もちろんないだろう。
僕たちが特殊なだけ。
素直に誘ってくれたら時間空けて遊ぶのに――僕の素直な考えだった。
――――――
「遅いぞ〜翔斗!」
まったくいつも待たせるんだから、と舞は言う。
現在の時刻は9時50分。
約束の時間より10分ほどは早かった。
「ごめんごめん、それで今日はどこに行くんだ?」
「今日は俺らの買い物に付き合ってもらおうと思ってな」
最近全然俺らの相手してくれなかったし、と正樹は愚痴を漏らす。
だが、その愚痴に僕を責めるような攻撃性はなく久しぶりに遊べることを楽しそうで、嬉しそうな言い方だった。
「しょうがないな〜2人のデートに付き合ってあげるか!」
わざとらしくため息を吐きながらやれやれと言うと、
「私たちが付き合ってあげるの!」
舞からご指摘を受けてしまった。
「左様で。ならよろしくお願いします」
と言いながらすでに僕たちは近くにある大型ショッピングモールに向けて足を進めていた。
話すのも久しぶりな2人だけど、やっぱり僕たちは幼馴染なんだなと改めて実感した。
――――――
ショッピングモールについて最初に向かったのはコスメショップ。
「ちょっとだけ見たい」と言って僕たちの返事も聞かずに行ってしまった。
僕に付き合うと言っていた舞はどこかへ行ってしまったのやら。
「今日の目的忘れるなよ〜」
まったくあいつは、と正樹が呆れながらいう。
目的とは?と思いつつも、「まぁ、あれでこそ舞じゃん」と正樹に伝える。
「そうやって甘やかすと、2時間ぐらいあそこに居続けるぞ」と言われてしまった。
経験済みなのだなと僕は苦笑いでその場をやり過ごすのであった。
30分くらいして一通りコスメを見た舞は満足したようで「翔斗の洋服を見に行こう!」と言って2階へと上がっていく。
2階へ上がって入ったお店は高くもなく安くもない丁度良いお値段の洋服店。
「ちょっと待ってて」
洋服探してくる、と舞はお店の奥へと消えていく。
正樹についていかないのか?と聞いたら、今日の俺の役目は翔斗を見張ることだと言われてしまった。
5分ほどして、奥の試着室の方で舞から呼ばれた。
正樹と一緒に向かうと、2種類のコーデを手に持ちニコニコしながら舞が待っていた。
「このままの組み合わせで着て、着終わったらどっちがいいか教えてね」
さぁ……どっちを選ぶんだろうと、舞が呟く。
試着室へ入り、1種類目のコーデを着た。
服の内容としてはシンプルなものでシャツとデニム。
来た感想としては凪が好きそうなコーデだなと言う感想だった。
2種類目のコーデは1種類目とは系統が違い、サイズはいつも着ているものより少し大きめだが生地は薄い。ズボンも少しダボっとしている。
このコーデは美月が好きそうなものだった。
試着室から出て舞に「どっちが良かった?」と聞かれる。
対して僕は、「どちらも気に入ったから買おうと思う」そう言ってレジへと向かった。
後ろの方から、「あれ?露骨だったかな?」「まぁ、付き合ってるんだから気付くだろうな、好意には鈍感だけど相手のことはよく見てるから、翔斗は」と話し声が聞こえる。
洋服のコーデを見た時からなんとなく僕は2人の目的を察していた。
だが、2人がこうして何かをしようとしているのは多少なりとも僕のためということは確かで、僕から何か咎めたりなんてするつもりはない。
舞が選んだ服を両方買ったのは……2人に褒めて欲しかっただけである。
買い終わり、お昼にしようということで僕たちは3階にあるレストランに入る。
そこでも舞は「これとこれどっちかを食べるとしたらどっちがいい?」と聞いてきた。
舞の演技は上手くない。
隣で正樹がため息を吐くのが何よりもの証拠だ。
舞が指を刺したのはハンバーグとパスタ、それぞれ凪と美月がよくファミレスに行くと頼むもの。
「もう、どっちも食べるよ」
だから素直に話したいことを話してくれ、と僕は2人にいう。
「ごめんな、俺は最初から素直に話そうと言っていたんだけど……」
正樹が申し訳なさそうに言いながら話を続ける。
「俺たちはさ翔斗が出した答えについて何も言うつもりがない。翔斗なら本当に2人同時でも幸せにできるだろうと信じているから。だけど心配なことはいくつかあって、その中でも恋人としての関係を深めるにあたって翔斗の初めては誰なのかということなんだ。だって翔斗も嫌だろう?朝露さんや夜行さんが翔斗よりも先にそう言った関係を持っていたかもと想像すると……」
こいつが横にいる時にいいたかないけど、俺は嫌だよと小さい声で正樹はいう。
確かに嫌かもしれないと思った。
そして、そう言ったところまで考えが及んでいない自分自身に少しだけ腹が立った。
いずれはそういうことになるだろうとは思った。
恋人として階段を登る時が……。
その時にどちらが先になんて争いになるとは少しも思っていなかった。
だけど考えてみたら簡単に思いつくことで、僕は少し2人の優しさに甘えてしまっていたのかもしれないと自覚する。
だけど、正樹に言われた時点で答えは出している。
僕も少しは成長したのだ。
「正樹の言う通りだな……でも大丈夫心配はいらない。僕は2人のことを幸せにすると2人と付き合う時に違ったんだ、今ここでは言葉でしか言えないけど、凪が、美月がどちらが先になっても後になっても、僕が2人に対して抱いている愛情をそのまま全てぶつけるつもりだ。決して妥協はしない。恥ずかしいとも思わない。後だからと言って悲しい想いはさせないし、あっちの方がなんてことすら僕は思わせないつもりでいるよ」
僕がしっかりと意見を言うと2人は急にコソコソと話し始めた。
「ど、どうする、」「いや、俺もあそこまでしっかり考えてると思ってなくて……」「わ、わたしもだよ」
2人の様子から、僕が何も考えていない奴だと思われていることだけはわかった。
腹が立った僕は、すぐさま店員さんを呼び僕が食べられる分だけの料理を最大量頼む。
そして、「2人とも今日奢ってくれてありがと!」と今日一番の笑顔で言うのであった。
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146話読んで頂きありがとうございました!
深夜テンションで描いたので少し文章とかおかしいかも、、多分大丈夫だと思います!
応援、コメント、して頂けたら嬉しいです!
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