第131話 5月18日 凪の誕生日会 (下)
「凪はここに立ってて」
そう言われ案内されたのは、先程から気になっていた布で隠されたテーブルの前でした。
やっぱりこれが誕生日プレゼントだったのですね。
そう思いながらも私は少しだけ疑問に思います。
あれだけサプライズに時間をかけてくれていたのに、プレゼントだけこんなわかりやすくするだろうかと。
そして、私の読みは合っていたみたいで周りをみると腕を後ろに回し何かを隠している3人がいました。
と言うことは、3人ともプレゼントを手に持っていることになります。この布の中身はなんなのでしょうか。
「はい、これは僕から。改めてお誕生日おめでとう凪」
翔斗くんの声によって私の意識は謎の布から差し出されたプレゼントに移ります。
どうやら順番でプレゼントをもらえるようです。
「ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「もちろん!!喜んでくれることを期待しているよ!」
どんなものであっても喜ばないわけはないのですが、言うほど無駄というものですね。
ワクワク!ドキドキ!しながら開けてみると、中には本カバーが入っていました。
「本カバーだ!!すごい嬉しい―――最近どうやって綺麗に本を読もうか悩んでいたので嬉しいです!!」
まさか、最近買おうか迷っていたものを翔斗くんからプレゼントされるとは思ってもいませんでした。
口にすら出していないものをくれるとは、さすが翔斗くんだと思います。
「それならよかった!そのカバーはね布でできて入るけど、汗とかでよれよれになったりしないやつなんだ!デザインも凪の名前をイメージした静けさのある青ベースにしてある!」
「本当に嬉しいです。ありがとうございます翔斗くん!大切に使いますね!!」
「喜んでくれて何より。あ、でもまだあるんだ。カバーを開いてみて欲しい」
そう言われカバーを開いてみると透明で、中に何かの葉が入っている栞が入っていました。
「栞まで……それに何か良いにおいがしますね!」
「そうそう!それはミントの香りがする栞なんだ!まぁ、嫌いじゃなかったら使ってくれると嬉しい」
「嫌なんか思うわけないじゃないですかもう毎日使います!!」
「うん!ありがとう!!」
「こちらこそ、ありがとうございます!」
最近の高校生はジュエリー系やブランド物などをプレゼントすると聞いていたので、もしかしたら翔斗くんもそう言う物をプレゼントしてくれるのかなと思っていました。
ですが、私の本当に望む物を考えてプレゼントしてくれたこの本カバーと詩織はどんな宝石よりも価値がある物だと思います。
大切に使って行こう―――そう、私は決めるのでした。
そのあと美月ちゃんからは、補充しようと思っていた化粧品とまさかの下着をプレゼントされました。
下着のサイズを確認してみると、まさかのピッタリ。
化粧品にしてもそうですが、いつのまにか確認したのですかね……。
さらには、翔斗くんに聞こえないように、「あのピンクだけじゃ勝負の時困るでしょ」と言われてしまいました。
別に、初めてはピンクにするだけでそのあと買いに行こうと思っていましたし!!
でも、美月ちゃんらしいと思いました。
美月ちゃんの誕生日には、これと同等、いや、もっと大人っぽい下着をプレゼントしてやります!!
なんだかんだ言って、いつも口喧嘩してしまいますが、私は美月ちゃんのことが大好きです!
「美月ちゃんありがとう!!」
「うん!どう致しまして!」
美香先生はと言うと、最初に「お金がなかったからこれで許してください」と言って、手作りしてくれたのだろう一冊のノートをプレゼントしてくれました。
ノートと言っても学校で使っているようなノートではなくメモ帳に近い物なのですが、開けてみるとそこには赤ちゃんの写真が貼ってありました。
「え、美香ちゃんこれは??」
「お兄ちゃんの小さい時から高校一年生の前半ぐらいまでのアルバムです。嬉しくなかったですか??」
「…………………………う、嬉しいに決まってよ!!いや、むしろ美香ちゃんのが一番嬉しいよ!もう美香ちゃんが優勝!!」
「えへへ!喜んでくれてよかったです!」
まさか、美香ちゃんから翔斗くんの写真集をもらえるなんて。
「ちょっと待ってよ、美香ちゃんそれは流石にわたしにもあるよね??お金払うから!お金払うからもう一冊ください!」
「そう言われると思って私の分も含めて3冊作って起きましたから!凪さん、3人同じ物がプレゼントでごめんなさい。もし嫌だったらお金貯めてまた別の機会に買ってきますけど」
「いや、そんなことしなくていいから!共有できる方が私も嬉しいし本当にありがとう美香ちゃん!」
「あの……僕の許可とかは一切なかったんだけど」
「凪さんのプレゼントなのに許可いるの?お兄ちゃんそれをダメって言うわけ?」
「それを言うのはズルすぎるっ!!」
そんな会話をしつつも文句一つ言わない翔斗くんは本当に優しい人だと思います。
とりあえず、毎日この写真集は読ませて頂きます。
それと、もしものためにスマホにも収めておこうと思います!
3人それぞれ違うプレゼントだったけれど、どれも気持ちがこもっていて本当に心から嬉しい物ばかりでした。
「3人とも本当にありがとう!!みんなの時は楽しみにしててね!!」
「うん!楽しみにはするつもりだけど、」
「まだ私たちからのプレゼントは終わってないよ?美香ちゃんやっちゃって!」
「はいっ!!ジャッジャーーン!!」
そう言って私に何かを言わせる間も無く、美香ちゃんは布を思い切り取りました。
そして、その中にあった物を見て私は言葉を失うのです。あった物というかその物の量に私は驚きました。
なんとそこにあったのは、50冊は超えるのではないかというくらいラノベや漫画、最近密かにつけるようにしている本の透明なフィルムカバーが大量に置いてあったのです。
なによりも私が驚いたこと。それは、私が集めたいと言っていた本が全種類揃っているということです。
「え、これ全部私にくれるって事ですか??」
「もちろんだよ凪!!」
「まぁ、凪ちゃんの次は私が読むけどね!」
「美香はフィルムだけ買いました…………」
本当になんとお礼を言っていいのか――。
みんなの顔を見るとこの本の山が今回のメインディッシュのようですね。
いつもならどんどん言葉が出てくるのに、今日に限って全くみんなを喜ばせられるような言葉が出ません。
それほどまでに私は嬉しいのです。
「夢みたい……こんな誕生日を送ることができたなんて」
「何言ってるのさ。毎年、いや来年にはこれ以上のお祝いをするつもりだから!」
翔斗くんの言葉にまた私は泣きそうになります。
「翔斗くん!私すごく幸せだよー」
とりあえず私は翔斗くんに抱きつきました。
泣きそうになるのをどうにか翔斗くんに甘えるという形に変えたのです。
2人の目の前で抱きつくのは少し恥ずかしいところではありますが、人間というのは怖い物ですね。こんな特別な日に抱きつくだけというのは、なぜか勿体無いと思ってしまったのです。
私は、一旦体を離したあとゆっくり目を閉じて翔斗くんの唇に向けて自分の唇を近づけていきました。
私のファーストキスです。こんな素敵な日に経験できるなんて私は明日から生きていけるのでしょうか。
そんなことを思いながらどんどん近づい行き、ついに触れ合ったと思った時、私の唇には明らかに唇ではないものが当たっていました。
「…………美月ちゃんその手邪魔なんだけど。あと何気に美香ちゃんも翔斗くんのことを引っ張って遠ざけようとしてるし」
「当たり前でしょ。どさくさに紛れてキスするなんて絶対許すわけないじゃん!」
「本当です!お兄ちゃんの唇を奪ったいいのは2人が結婚するまで美香だけですから!!」
このタイミングなら行けるかなと思ったのですが、やっぱり無理だったみたいですね………。
まぁ、またどこかで絶好の機会があることでしょう。
その時は絶対に翔斗くんの唇を奪ってあげるということで、今回の私の誕生会は大成功に終わるのでした!!
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131話読んで頂きありがとうございます!
私も本50冊欲しい。誰も誕生日に送ってくれないので来年は自分で買いに行くことにします!
コメント、応援、良ければしていってください!
よろしくお願いします!!
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