朝露視点

第90話  1月25日 引っ越ししないといけなくなりました

 目覚めると、目の前に翔斗くんがいると言う状況、私にとってどれだけ幸せな事でしょう。



 昨日寝る前に抱きしめた翔斗くんの腕は未だに抱きしめたままでした。

 少しだけ罪悪感を抱いてしまいます。

 翔斗くん自身はとても寝れそうにない体勢だったから。


 お詫びと言ってはなんですが、朝ごはんを作って待っていようと思います。

 起こさないようそっと腕を抜け、私はリビングに向かいました。


 リビングはとても寒かったです。

 お詫びも兼ねて私が犠牲になって暖めておきましょう。

 幸い、床暖などは勝手に使ってくれと言われていましたので。


 今日の朝ごはんは何を作れるでしょうか。

 キッチンに行き冷蔵庫と炊飯器の中身を確認しました。

 冷蔵庫には材料が、炊飯器の中には白米がしっかりと入っています。

 やっぱり朝と言えば!そう心の中で呟きながら私は朝ごはんに取り掛かります。





「ごめん。一人でやらせちゃって……」


 翔斗くんがリビングに来たのは私が朝ごはんを作り終えてすぐのことでした。

 寝癖が付いている翔斗くん、可愛い!!


「おはようございます。大丈夫ですよ。私が早く起きてしまっただけなので」


「うんおはよう。そっか、ならありがとう」


「いいえ。もう出来ているので早速食べましょう」


 私と翔斗くんは早速ダイニングテーブルに向かい合わせで座り、日曜日ながら朝早くからやってくれているニュースを見ながらご飯を食べました。


 ちなみに、今日のメニューはわかめと豆腐のお味噌汁に白米、卵焼き、鮭、市販の納豆です。


「美味しいね。ありがとう」


 翔斗くんに褒められてしまいました。

 料理の腕は翔斗くんの方が上なのでとても嬉しいです。


「そう言って頂けると作った甲斐があります!」


 二人でたわいの無い話をしながらその後も楽しく朝ごはんを食べました。





「じゃー何しようか?本を読むならまた買いに行かなきゃだよね?」


「私、昨日やったゲームがやりたいです」


 学校で男の子たちがゲームの話をしているのをよく耳にします。

 毎回、なぜゲームの話しかしないのでしょうか、と思っていたのですがやってみてその理由はよく分かりました。

 ゲームと言うのはとても中毒性があります。

 漫画と同種類と言ったところでしょう。

 私はそれをわかっていながらやってみたいと思ってしまいました。

 せっかく家に居るのだからたまには良いでしょ!


「お!いいね!それなら、今日も僕が全勝かな」


「ふふ、何を言ってるんですか。そう何回も負けを譲ったりはしませんよ」


 もちろん昨日はゲーム自体初めてと言うこともあり翔斗くんには一度も勝てませんでした。

 悔しいので、今日は一勝ぐらいして見せます。





「はーいまた僕の勝ち!!」


 本当に悔しいです。

 翔斗くんは勝負事に関して全く手を抜いてくれないと言うことがわかりました。


「次は勝ちますから!」


 先程からこのやり取りばかりな気がします。

 何度やっても翔斗くんには勝てません。

 色々なパターンを試したりしているのですけどね……


 ちなみに、私たちが今やっているゲームはス○ブラと言うゲームで少人数から大人数までできるバトル系ゲームです。

 コントローラーの入力の仕方でキャラの動きが変わるため、たかがゲームと侮っていたら恥をかきます。

 ソースは私です!

 ふふ、この言い回しなんだかんだ好きなんですよね。

 最近読んでいるラノベでよく使われる言い回しです。

 いつか言ってみたい台詞としては、「今の凪的にポイント高いかも」これは言ってみたいですね。

 美月ちゃんが言いそうな台詞ですね。

 しかも、今私と同じくこの作品読んでいると言っていたので……




 私と翔斗くんが次の試合に向けてキャラを選んでいるとスマホのバイブレーションが聞こえてきました。


「電話ですか?珍しいですね」


 私のスマホに電話がかかってくることは無いと思っていたので、私は翔斗くんにそう言いました。


「いや、僕、スマホポケットの中だけどなってないから凪だよ」


 まさかの私だったみたいです。

 こんなこともあるんですね……

 リビングのソファーに置いてあったスマホを握ると確かにバイブレーションは私のスマホからでした。

 誰だろう……そう思いスマホの画面を見て私は一瞬でテンションが下がりました。


「お母さん……」


 思わず声を私は漏らします。

 お母さんからの電話に驚いたのか翔斗くんもこちらを見ています。


「凪のお母さんか、なんだかんだ初耳かもこのワード」


 それはそうだと思います。

 お母さんのことなんて口にしたく無いですし嫌いですから。


「出ないの?」


「そうですね。もしかしたら大事なことなのかもしれないので出ますね。すいません」


「大丈夫だよ」


 私はリビングの出口に向かいながら通話ボタンを押しました。




「はい。もしもし」


 淡々と私は電話の向こうに話しかけます。


「その話し方、相変わらずなのね」


 電話のスピーカーからとても冷たい声が耳に響きます。


「お母さんだって変わっていないと思いますよ。それで、何のようなのでしょうか」


「そろそろ約束の日が近いと言うお話しよ」


 お母さんから言われたことは、昔、私が一度だけ話されたことがあることでした。

 この話が私にとって嬉しいものでは無いことは確かです。

 もしかしたら私の見せたく無い一面を見せることになるかもしれません。

 翔斗くんと一緒に居るのにそのようにはなりたくありません。


「申し訳ないですけど、今、外にいるんです。今から一旦家に帰りますのでその時でもいいですか?」


「あら、そうなんですの。ごめんなさいね。今日は1日空いている日だから電話待ってるわね」


 お母さんはそれだけ言って電話を切った。

 私はリビングに戻り翔斗くんにこの後のことを伝えます。


「ごめんなさい翔斗くん。用事が出来てしまったので一旦家に帰ります。夜ご飯の時には戻ってこれそうなのでまた来ますね」


「あ?そうなの、わかった。じゃ〜、一旦バイバイだね。また夜!できたらゲームの続きしようね。美香も混ぜて」


「そうですね。よろしくお願いします」


 帰るのは少し名残惜しいですが、今はそれどころではないのですぐにうちに帰ります。


 家に着くと、私は早速電話の履歴から再度お母さんに電話をかけます。


「もしもし、お母さん」


「もう帰ってきたの。早かったわね」


「そう言うのはいいので早く本題に入ってください」


「はいはい。わかったわ。とりあえずその家に住めるのも4月までになりそうだわ」


 お母さんから最初に言われた内容はそれだった。

 もしかしたらと予想していましたが、本当にこうなるとは……



 私は4月で家を失うみたいです。

 本格的に引っ越しをしないといけなくなりました。


___________________________________________

90話読んで頂きありがとうございます!


凪母、ついに出てきましたね。



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よろしくお願い致します。









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