古巻視点

第79話  1月17日 翔くんとのデート(下)

「うん……うん、大丈夫。今日はそうするね。また明日、おやすみ」


僕の隣では、美月が美月のお母さんと電話をしていた。



なぜ、お出かけ中に美月がお母さんと電話をしているのかって……それはここまでに至った経緯を少し話さないといけない。



・10時30分……僕たちは温泉施設に到着した。

   

お風呂を出たら美月がナンパをされていた。

流石に僕も焦ったし、美月が嫌がっているのに手をつかんでいる男性にとても腹が立った。

そして、ナンパの相手を投げてしまった。


それよりもその後に美月に抱きつかれた時のあの柔らかさが忘れ……ゴホンッ……なんでもない。


漫画コーナーに行った。

あの半個室は、心臓に悪過ぎる。 

ドキドキが止まらなかったし、美月はとても良い匂いがした。

逆に僕が臭くないか心配だった。

よかった……お風呂で体をしっかり洗っていて。


その時に美月が僕の足の間に入ってきた。

もう漫画よりも美月のむ……ゴホンッ……なんでもない。


岩盤浴にも行った。

汗をかいている美月が、とてもエロかった。

思わず胸を見て……ゴホンッ……なんでもない。


漫画は漫画で面白く途中からは、ドキドキしながらもしっかり読むことができた。

今度は買えたら全巻買おうと思う。


今日自分自身のことが少しだけ分かった。

僕は……胸が大……ゴホンッ……本当になにを思っているんだ僕は。


・18時00分……最寄駅行きのバスに乗った。


駅に到着後、電車が終わっていた。


・18時50分……冷静になった僕らはまず家族に電話する事にした。

      

先に僕が、美香と僕の家にいた凪に電話をして、状況を説明した。


美香は、「それお兄ちゃん達なにも悪くないじゃん。とりあえず美月さんと話し合ってどうするか決めな」と言われた。

なんて冷静なんだ……これでもまだ中学生だぞ

流石が僕の妹だ!さすいも!


凪に関してはなにも言っては来なかったが、美香曰くとても頬が膨らんでいたそうだ。

そして、電話の最後では、美香から「あ、なんかドス黒いオーラ出始めたからご飯にするバイバイ」と言われ電話を切られてしまいました。


その後、メッセージアプリを見たら凪から


―――――――――――――――――――――


「朝露」『美月ちゃんだけずるいな〜』


―――――――――――――――――――――

と、送られて来ていた。


これは、絶対美香の手も加わっているだろうな……


―――――――――――――――――――――


「古巻」『元々決まっていた土曜日とそれに

     加えて日曜日も遊ぶという事で

     いかがでしょうか』


―――――――――――――――――――――

と、返信すると、


許してやろう、と言ってそうなスタンプが送られて来た。




そして、現在、美月がお母さんと電話して終わったところだった。


「どうだった?」


「ん?怒ってはいなかったよ。たまたまお父さんも仕事でいなかったし」


「そうなのか……今度美月のお母さんには謝りに行かないとな」


「な、なんでよ。大丈夫だよ。それに謝らないといけないのこっちだし。あ、でもお母さんから一つだけ条件付けられちゃった」


「ん?条件?」


「うん……今回のことお父さんに内緒にする代わりに翔くんを明日家に連れて来なさいって……」


え??なんで?

でも、一言でも謝りたかったからタイミング的にはいいのか……


「わ、わかった」


「明日もお父さんはいないし」


なんでさっきからお父さんのこと気にしているのだろうか……


「う、うん。わかった。それなら明日はそのまま美月の家に行こうか。

とりあえずお腹すいたよね。これからどうするかはご飯を食べる時に決めよう」


「そうだね。でもこの辺……どう見てもあれしかないよ?」


「確かに、ご飯食べれるところあれしかないね……」


駅の周辺にはコンビニ、そして、す○家しか見当たらなかった。


「ごめんね……美月との初めての夜ご飯が○き家で」


「それはいいよ。翔くんと食べれることが嬉しいし」




僕たちはすき○に来た。


僕が頼んだのは8種のチーズ牛丼。

これ本当に8種類も入ってるのかなって思ってしまうぐらい色が3種類しかない。


美月が頼んだのはウナ重だった。




「それで……どうしようね。流石に一緒に泊まるのは翔くんあれだよね?」


うん僕も居た堪れなくなるだろうし、流石にそれは美月も嫌だろうし、


「それは流石に美月にも申し訳ないし……とりあえずこの辺りにある泊まれるところを探すしかないね」


「私は一緒でもいいだけどな……」


ん?なんか聞こえたような……


「なんか言った?」


「あ、うんん、バス乗っている時に○PAがあったなって。そこだけ異様に大きかったから覚えてたの」


あ〜あれかオレンジ色と黒色が印象的で、CM終わりの女性の声がやたら良い声で「AP○」と言っているやつか。


でもあれって……あ、一応ビジネスホテルなのか。


「ならそこにしようか」


僕は一泊の料金を調べてみる事にした。


「え……」


「翔くん?どうしたの?」


「あ、いやこれ」


「うわぁ……」


そこに表記されていたのは、


[空室一部屋 ダブルのみ]


という文字だった。


「ほ、他のところ探して見ようか……」


「そ、そうだね……」



結局、なかった。ここからだと10キロ先にあるぐらいだった。

僕が頭を抱えていると……


「翔くん。翔くんは私のこと襲ったりするの?」


な、なにを言い出すんだ美月は、


「そ、そんなことするわけないだろ」


「そうだよね。私も翔くんは、私が悲しむ事はしないって確信があるよ。それなら一緒に泊まってもいいんじゃない?逆にせっかくなんだし楽しもうよ」


でもそうだよな……


「そうだね!ならよろしくね」


「はい!こちらこそよろしくです!」


そうして僕たちは同じ部屋に泊まる事になった。


(このチーズ牛丼、8種類の味がする。すごいな……)




「結構しっかりしてるんだね!」


「本当だ確かに2人寝れるって感じのベットだね!」


僕たちは無事、ホテルに入ることが出来ていた。

今回とても運の良いことに僕たちはもうお風呂に入っているのだ。

これだけは本当によかった。


「ちょっと私これに着替えて来るね……私服にシワが付くと嫌だから」


「う、うん」


そう言って、美月は着替えに行ってしまった。

同じ空間で女子が着替えるってなんだかとても緊張してしまう。

それが好意を寄せている人なら尚更。



「あ、あの……どうですか?」


み、み、水色だと……温泉施設の時に着ていたものよりも露出部分が多いせいで少しだけ下着が透けて見えるのだ。


「う、うん、とても似合ってるよ」


「じゃー翔くんも着替えて来たら?」


「そうだね……着替えてくる」


僕も自分を抑えるため(何がとは言わない)着替えることにした。






「「カンパイ〜〜」」


僕たちはホテルに着く前にコンビニでジュースやお菓子を買って来ていたので早速飲み食べすることにした。


「翔くんお願いがあるんだけど?」


「ん?なに?聞ける範囲ならいいよ」


「一緒に写真を撮って欲しいの……」


「いいよ?」


「え?ほんと!やったーー」


え?なんでそんなに喜んでいるだろう。


そう思っていた僕が馬鹿だった。

僕は一緒に写真を撮る、という行為を舐めていた。

とても距離が近いのだ……


「なんか緊張するね……」


緊張どころではないんだけど……心臓の高鳴りがすごい。


「う、うん」


「いくよ、ハイチーズ」


"パシャ"


「見て!見て!良い写真じゃない??」


「うん、そうだね、」


「うん!!後で送っとくね!」


僕は写真なんて気にしている余裕がなかった。

主に……何がとは言わない。


さっき抑え込んだばかりなのに……






「そろそろ寝ようか」


時刻は23時を過ぎていた。


「そうだね……」


美月は少しだけ名残惜しそうだったけど、結構話したし、少しだけ、本当に少しだけ眠気が来ていたので寝れるのではないかと思ったのだ。




30分後……全く寝れなかった。



「翔くん……起きてる?」


「うん、起きてるよ」


「よかった。寝れないから少しだけお話ししよう。このままの体制でいいから」


まあ、僕も眠れないし、


「うん。いいよ」


僕が返事すると一拍置いてから美月は質問してきた。


「翔くんって好きな人いる?」


いきなりだな……どうしよう、好きな人2人いて、その内の1人が美月なんだけど。

そんなこと言えるはずないよ。


「いきなりだね……」


「まーね!翔くん、私は好きな人いるよ」


少しだけ心臓の鼓動が速くなった気がした。


「そ、そうなんだ」


「うん!その人は私に学校生活の楽しさを教えてくれた人なんだ」


「なるほど……」


「でも、その人はね、他の人が好きなのかもしれないの……」


一瞬だけドキッとしてしまった。

なにを考えているんだ僕は……

美月の相手が僕だと思うなんて。

僕は馬鹿すぎる。


「うん……そうなんだ」


「ふふ、翔くんこっち見てください」


僕は今、美月に背中を向けていた。


美月のことを見ながらなんて寝れないし、抑えたものがまた出てくるから。

出て来たとしても美月を襲うなんて事は絶対にしないけど……とりあえず振り向くことにした。


すると……


美月は少しだけ僕との間を詰めて、横向きで寝転がりながら僕の両頬に両手を付けてきた。


「ちょ、ちょ、み、美月?、」


「ふふ、翔くんのその顔とても可愛い」


「可愛い……って」


僕が戸惑っていると、美月から深呼吸する音が聞こえてきた。




「翔くん……私にを教えてくれて本当にありがとう!」





「そ、それって……」


その後を言う事はできなかった。


美月の顔がとても真っ赤で、でも名前の通り夜を照らす美しい月みたいで見惚れてしまったから。


「翔くん私のこともしっかり見てね。私は翔くんのこと待っているから」


そう言って今度は美月が僕に背中を向けた。




やっぱり凪に抱いている感情とは別の感情が美月にはあると確信した。


でも、まだどんな表現なのかはわからない……

わかった時、それが僕の答えが出る時なのだろう。


そして、僕が一方的に好きだと思っていた2人は、多分としか今は言えないが僕のことを好きだと思ってくれている。

だけどこれだけは明らかにわかった。

2人は僕からのアクションを待っている、と言うことだ。


こんなの、僕に選べるのだろうか……


今の僕にとっては生きるか死ぬかの2択よりも重い2択だと思ってしまった。


  本当に、僕には選べるのだろうか……









次の日になった。

  結局僕は一睡もすることができなかった。


___________________________________________

79話読んで頂きありがとうございます!


翔斗の視点ですが、名前は翔くんとのデートにさせて頂きました。


翔斗くんよく我慢できるね。

えらい。

そして夜ちゃん可愛い!


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