階級学園のエゴイスト
KM*P
プロローグ 私立成蘭学園
「キャー、強盗よー」
朝早い駅のホームで女性の叫び声が駅内に反響する。
目の前では日常じゃなかなか見る事がない事柄が起こっていた。あからさまに何かをしそうな格好をした奴がしっかりと高そうな赤い鞄を抱えて俺がいる階段に向かって走ってくる。
「そこのおにーさん止めてー」
男と対に階段を降りる俺に女性が少し枯れている声で呼びかけてくる。
それを聞いて俺は勿論スルーして慎重に階段を降りた。
「はぁはぁ」
息を切らした女性が丁度俺が降りた最後の段で両膝に手を乗せて大きく息を吸っている。
「な、なんで」
女性は悲壮感と少しの怒気を含めた瞳で俺に疑問を投げかけて来る。
「すいません、イヤホンしてたんで…」
俺は、耳からイヤホンを外し謝罪を溢す。
無論これは嘘である。実際女性の声は耳に入っていたし行動を起こそうとすれば少なからず強盗の足止めくらいは出来たかもしれない。しかし、俺の中ではそれ事態無意味な物としか思えなかった。助けた所で来るのは謝意良くて少量の謝礼くらいだろう。そんな物を得る為に今という時間をかける程己の中にある他者に対する意識は高くない。
「そ、そうですか」
女性はそう答える。それがこの事件の終わりを遂げるものだ。俺はその後すぐに電車に乗り今日から始まる高校生活へと意識を変えた。
「おー、やっぱりすげ〜な」
校門前では数多くの皺一つない綺麗な白い制服に身を包んだ新入生と思われる生徒が校舎を目にしてそれぞれ驚嘆の声を上げていた。
それもその筈校門の先にある成蘭学園は超が付くほどの金持ち学園である。
入学金が化け物ほど高く学校が認めた特別枠以外本当の令嬢や政治家の息子などが入学する。
そのため学年ごとに校舎が設備されており中等部と高等部計6クラス分校舎が存在しているのに合わせこの学校特有に用意された校舎が10棟、教師棟が1棟と合計すると17棟が東京ドーム2個と同等の広さの敷地に存在する。
それに加えてグラウンド6個、体育館10個それにそれぞれの部活の施設が存在する。
しかもどの校舎も外見だけでとても良い管理が行われている事がわかる。
俺は驚嘆する生徒を横目に玄関のエントランスで受付を済ませ学生証とこの学校独自のルールが記されている聖典そしてこれもこの学校独自のものらしいスマートフォンそれとバッチを受け取り学生証に書いてあるクラスに向かう。
教室の前では先輩だろうか。色んなバッチを付けている人達が教室ないをジロジロ凝視している。俺の目の前を歩いていた生徒は先輩達取り囲まれ色々と話を聞かされていた。
俺は朝からそんなダルい事に時間を割きたくなかったので無視して早急に教室に避難する為に潜り抜けようとする。
「あのちょっといい?」
扉を抜けようとした直後目の前に男の先輩の手が伸び教室への扉を塞がれてしまった。
「なんですか?」
嫌悪を感じさせるくらい冷涼な声で返答する。
「君、中等部からの子じゃないよね?」
「違いますけど」
先輩の質問の意図が掴めないが確かにこの学園では中等部から高等部へエスカレーター式で上る人が多いので俺は珍しい方なのかもしれない。
「そうか、そうか、この後ちょっと時間あるかな?」
「いや、ないです」
そう言い先輩の防壁を無視して教室内へ逃げる。先輩の言い分は正直理解出来ないが特に得出来そうな事柄じゃ無さそうなのでこれが正解だろう。
「よっ、お前も関わらないようにする派の人間か」
席に着くと前の生徒から声を掛けられる。正直鬱陶しい。こんな友達発生イベントは普通に喜ぶべきなんだろうが俺からしたら聖典を読んだ方が得が大きいと感じてしまう。
「そうだな」
俺は軽く返答し、早速聖典を開き内容を読み進める。
「聖典読むって事はお前、編入か」
「まあな」
「なるほどな。それで。俺は
目の前の生徒は顎に手をつけてなるほどと復唱してから俺に対して手を伸ばしてきた。ここで無視しても良いのだが伸ばされた手を無視し続けるのは居心地が悪かったので嫌々「よろしく」と言い手を握り返した。
それに対して新太は再度『よろしく』と言い力強く握り返し出来た。それに次いで
「わからない事も多いだろうから軽くこの学校の事説明してやろうか」
と言う提案が出され初めて聖典から新太の顔を見る。そいつは少し頬を上げ満足そうに「やっとこっち見た」と声を漏らす。
「それならお願いしたい」
「いいだろう!まあ、どちらにせよ聖典を使いながら説明するからちょっと貸して貰えるか」
そう言われ新太に聖典を手渡す。
「まずな、この学校は階級と言うものが存在する」
「階級か」
その事は学校のホームページにも書いてあったので知っているが精々『この階級を上げる為に生徒達は日々精進しています』見たいな書き出しくらいで最初に話すほどホームページでは書き記されていなかった。
「この階級は大きく分けると『奴隷』『平民』
『貴族』と『十傑』で分かれて、最後の十傑以外はそれぞれ星1から5までに分別されるんだ」
「まるで古代ヨーロッパの身分制度だな」
思った事が口から漏れた。まだ、階級がどれほどこの学園に関係しているかわからないがもし以下のような身分制度ならこの学園は思ったより息苦しい所かもしれない。
「その通りだ。表上はそこまで重視されていないが階級はこの学園の地位全てだ。簡単に言うとほら見ろよ」
新太の指差す方を一瞥すると眼鏡を掛けた小柄な男子生徒が大柄の男に首輪を付けて教室に入ってきた。眼鏡男子が男に何か言うと男はすかさず机や椅子を磨き眼鏡男子の後ろで手を組んで綺麗な姿勢で立っていた。
「ああ言う事だ。見てわかる通り奴隷生徒の人権はこの学校上存在しない」
なるほどな。クソほどどうでもいい。いつの間にか横に座っていた女子生徒は呆気に取られたような顔をして目を見開いていたが俺からしたらそんな他者の上下関係になど全く興味が湧かない。
「治外法権か」
「ふっ、まあそんな感じだ」
新太は俺がボソッと呟いた事に微笑しながら答える。それとほぼ同時に隣の女子生徒は立ち上がり2人の下に駆け寄る。
「あ、あの」
「ん?何か?」
女性生徒に対して眼鏡男子は目も向けずにぶっきら棒に答える。
「どうして首輪なんか付けてるんですか?」
「そんなの簡単だよ。こいつが俺の奴隷だから」
「奴隷?それって現代では差別用語に値しますよ。ちゃんとした名誉毀損の1つです」
「だから何?話の旨を先に言えよ」
「やめて下さい」
「はっ、それだけか。そのお人好しムードを俺に対してこれ以上続きるなら次はお前を奴隷にする」
眼鏡男子は脅迫を込めて鋭い眼光で女子生徒を睨む。それに対して女子生徒は一歩後ろにたじろぎながらも手を強く握り締めまた一歩前に出る
「出来るものならして下さい。まあ、今は当事者じゃないので私からは訴える事は出来ませんが貴方がもし私に何かするなら法律の下裁いてもらいます」
「なんだ、ただの自己中か」
これは眼鏡男子の声じゃない。俺の声が心から抜けたして口から無意識に飛び出した。
「えっ?」
女子生徒は驚いた顔をしてこちらに振り向いた。
「い、いや間違えた。工事中かって言いたかったんだ」
声に出したものは後からなかった事に出来ないので少しの笑みを浮かべつつ訂正する。
「そ、そうですか。いや、違います。貴方も何か思わないんですか?」
一言のミスで何故か俺にも火を投げてくるので取り敢えず時計を確認して残り2分をどうやって潰すか考える。
「まあ、この学校のことなんも知らないのにそこの眼鏡君に何か言うのはどうかなーって思うかな」
「ふっ、こっちもすぐに奴隷だな」
少し眼鏡男子の肩を持つように話したはずが何故か眼鏡男子は鼻で笑いながら俺に対しても刃を向けてくる。
「また、そんな…『キーンコーンカーンコーン』」
女子生徒が何かを言おうとした瞬間ほぼ予定通りに時計の針が学活の時間を指す。
それから瞬間的にほぼ同時に入ってきた女性の教師によって会話は終わり学校が始まった。
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