第134話
統括的軍事同盟に加盟したい二国からの使者が行方不明です。
すでにローレル様が調査隊を派遣していますが、こちらから参加希望連合に接触した方が良いかもしれません。
何が原因で使者が来れないのかわかりませんが、当事国と話が出来ないのでは先に進みません。
「シルビア、お前の意見を聞かせてもらおう」
グロリア様に尋ねられ、私は少し考えて答えます。
あ、本日からはクラウン帝国と
「こちらから我が連合の事を聞くのは止めましょう。しかし別の用事のついでに聞くくらいなら問題は無いと思います」
「そうね、こちらから聞いて味方になってくれると勘違いされても困るものね」
「し、シーマ王妃様? いつもエスクード連合王国では簡潔・迅速をモットーにしていらっしゃるではありませんか?」
「お黙り! お前には状況によって使い分ける頭も無いのですか!」
「も、申し訳ございませんー!」
シーマ様が特使に叱咤します。
エスクード連合王国の特使はまだ若い男性なので、勉強のために来たのではないかと思います。
メインはシーマ様がいらっしゃいますしね。
「よし、ではローレルよ、何か手頃な用事はないか?」
「用事でしたら沢山あるでしゅ。小麦とトウモロコシの価格交渉、治安の不安による貿易の見直し、有事の際の支援でしゅね。お勧めは治安関係でしゅ」
「よし、ではボフダーン国にはサファリが、ルーツィク国にはステージアが向かえ。くれぐれも道中の安全を確保しろ」
「わかったよグロリア兄様」
「ウチにお任せや!」
「二国の使者が行方不明になった件の調査にはシルフィー、お前とローレルでやれ」
「私、ですか?」
「そうだ。二国とも二人で調査するのだが、ローレルはいいがお前がいる事を気取られるな」
「いいでしょう。かなりの危険を伴いますがやり遂げて見せましょう」
「お任せくだしゃい」
「
「ほほぅ? どうやら兄上は俺に成果を上げさせたいようだ。良いでしょう! このミストラル、いつもの様に最高の成果を出してご覧に入れましょう!」
「わかりました……グロリアお兄様」
「了解だわ、グーお兄様」
こうして参加希望連合の二国へ向けて
……なんてフットワークの軽い
結果が出るには少し時間がかかるでしょうから、残った私達は他にもこちらに参加したい国が無いか探しましょう。
ひと月ほどが過ぎた頃、様々な情報が入ってきました。
まずは参加希望連合の二国ですが、両国ともに三度も使者をこちらに送っているそうです。
しかし三度共に使者が行方不明になり、今は誰も行きたくないという事です。
そして行方不明の使者ですが、まだ断言はできませんが犯人に繋がる情報が入ってきました。
「やはり二国とも戦争を回避したいようだな」
「ええ。しかし統括的軍事同盟にも参加はしたい、との事ですわね」
グロリア様とシーマ様が報告書とにらめっこしていますが……グロリア様は少々筋肉質で少々
その対照的な御二人が神妙な面持ちで悩んでいます。
「どうするの? 戦争を回避たいのは当たり前として、軍事同盟に参加したいというのは反対連盟の意思と真っ向から対立します」
「そこが一番の悩みどころだ。参加させれば反対二国は侵攻し、参加させなければ戦争はしないかもしれないが確執が残る」
「場合によっては参加希望連盟の二国は国際社会から白い眼を向けられますわよ?」
「そうだよな……」
難しい表情の御二人ですが、その姿さえ様になって見えるのはルックスの良さゆえでしょう。
しかしやはり簡単には話がまとまる事は無いようです。
一度基本に戻って来ましょう。
戦争をする理由は参加希望連合を吸収したいからです。
反対連合の二国は参加希望連合の二国を自国に取り込みたいので、統括的軍事同盟に参加されたら侵略しても返り討ちに合います。
参加希望連合が統括的軍事同盟に参加したい理由は逆で、反対連合からの侵略を防ぎたいからです。
つまり真っ向から対立している訳です。
最初は一つの国だったとしても今は別の国、仮に取り込んだとしても昔の様に上手くは行かないでしょうに。
「たとえ侵略が成功したとしても当時を生きていた人なんてもう居ないのですから、文化も人も違うのに一つにまとまるはずがありません……」
思わず独り言を言ってしまいました。
しかしそれを聞いていたグロリア様とシーマ様は目を見開きます。
「「それだ!」わ!」
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています 内海 @utumi
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