第131話
「支援の条件としてクラウン帝国には軍を解体してもらいます」
クラウン帝国に支援条件を伝えると、帝国側の人達は大声を上げます。
それはそうでしょうね、軍を解体したらもう戦争が出来なくなるので、エルグランド王国を攻める事が出来なくなります。
元々軍事に力を入れており武器の売買が主な資金源なので、軍が無くなるとその力の誇示する場所が無くなってしまいます。
「待ってくださいシルビア殿、軍を解体と言われても我が帝国は武器の売買が主だった産業だ。軍が無くなっては多くの帝国民が路頭に迷ってしまう」
皇帝センチュリーの言葉に周囲の帝国の重鎮達が同調します。
その顔は戸惑いというよりも怒りの色が強く見えますね……やはりダメですか。
こちらとしても別の仕事を用意できるわけではないので、軍事産業を無くすことは諦めるとしましょう。
「ではどうしますか? 支援を受けずにどれだけの期間帝国は持ちますか?」
「そ、それは……だが軍事産業はダメだ。他に変わりの事業が無い限りその案は受け入れられぬ」
「はぁ、仕方がありませんね。では軍は解体しなくても構いませんが、その代わり軍の役割を変えていただきましょう」
「変える、とは?」
「平時は軍隊を治安維持に回してください。今の帝国軍は憲兵と完全に分かれていますよね? なので軍と憲兵を一つにし、名前を……そうですね、
「軍……警察? 警察とはなんですかな?」
「警察とは法に
「憲兵との違いがわからぬ。帝国法に則った活動ならば別の組織にする必要はあるまい?」
「今までの憲兵では力がモノをいう組織でした。しかし警察はしっかりと帝国法を学び、犯罪者への対応も法に則り裁きます」
この説明では深い所まで理解は出来ないでしょう。
しかしそれで良いのです、今完全に理解されてしまうと後々面倒になりますから。
「……帝国法を学ばせて治安維持をさせ、軍としての訓練もさせれば良いのかな?」
「ええ構いません。有事の際には軍として活動してもらいますから」
帝国の人達が顔を寄せてヒソヒソ話を始めます。
「すまないが少し休憩を入れてもよろしいかな?」
会議室を出て控室へと入ります。
「はぁ……緊張しました。あれで問題はありませんでしたか?」
「はいシルビアしゃん。予定通り進んでいるでしゅよ」
「皇帝相手に……堂々としていたね……シルビア」
「緊張しっぱなしですよリック様」
リック様とローレル様がソファーに座ったので、私はお茶を入れようとします。
が止められました。
「シルビアしゃん、今のアナタがやる事ではありましぇん」
「お茶は……ここのメイドに……いれさせよう」
おっと、そうでした。
今の私は黒幕シルビアですから、いつも通りにお茶を入れてはいけませんね。
黒幕……ふふふ、なんだか子供の頃に読んだ物語に出て来る悪党みたいですね。
「それで……向こうはどういう返事を……して来ると思う?」
「間違いなく軍警察で手を打つと思いましゅ。そうしないと支援を受けられましぇんから」
「私もそう思います。今の帝国には軍事に替わる産業がありません。軍事産業を維持できるなら飲むと思います」
「でしゅがもしもダメな場合は……」
三人で頷きます。
そろそろ休憩も終わりでしょうか、会議室に戻るとすでに帝国側は戻っていました。
「お待たせしました。それでは会議を再開しましょう」
それぞれが席に座ると皇帝センチュリーが口を開きます。
「結論から言わせてもらうと、軍警察の条件を受けようと思う」
「そうですか。それでは支援をお約束……おっと、一つ忘れていました」
「ん? まだ何かあるのかね?」
「私達エルグランド王国はアフトヴァース国とワズ国の暴走を止めるため、いくつかの国で共闘しています。クラウン帝国にも参加していただきたいのですが……」
「あの二国を止めるために? それならば喜んで参加させてもらおう。戦争が始まってしまうと小麦などの高騰が目に見えておるからな」
「ふふふ、その通りです。参加、ありがとうございます」
さてメインの目的があっさりと終わったところで、今晩は歓迎パーティーを開いてくれました。
エルグランド王国とクラウン帝国の関係ではこの先も友好は望めないでしょう。
しかし今だけはひと時の平和と共闘の為に相手を信用し、今後の関係を少しでも改善できれば嬉しい。
さて明日はアルピーヌ共和国へ向かいます。
戦争前から帝国に支援をしていた国ですが、こちらは一体どうなる事でしょう。
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