第117話
招待状をお城に届けた帰り、兵士の詰め所で見てしまった見た事も無い物。
きっとそれが防衛の穴と思われる部分を埋める物でしょう。
しかし私はパルサー様に報告をしないでいます。
言えば必ず調べろと言われますし、万が一にもスパイまがいの事をして見つかった場合、ディアマンテ龍王国とエルグランド王国の関係に影響します。
戦争は……嫌です。
翌日からも何かと用事を言いつかりお城に向かわされます。
これだけ毎日お城に行くものですから、すっかり門番さんやメイド、執事さんと仲良くなってしまいました。
「随分と皆と仲が良いようだな。なのになぜコルトとは仲が進展しないのだ?」
バルコニーでアウトランダー
最初からそうでした、初対面にもかかわらず終始不機嫌そうで、
何とか会話を振っても空返事。
ここまで嫌われたのは
「さあなぜでしょうか。私にはわかりかねます」
コルト様が私を嫌っているから、などとは言えないので適当に誤魔化します。
というよりも
相変らずコルト様との関係を進めようとする
何とかお茶会が終わりお城の中を歩いていると、兵士達がゾロゾロと歩いてきます。
あら? 何か筒のような物を肩に担いでいますがあれは……⁉
兵士の詰め所にあった見たこともない何かだわ!
え? え? お城の中で普通に持ち歩いて良い物なのですか?
しかも兵士の数名は門番もしている人です。
「やぁシルビアちゃんじゃないか。今日も国王
「はい、いつもの様にアウトランダー
普通に話かけてきました! ソレは軍事機密ではないのですか!?
「そうなんだよ~、今から鬼上司との訓練さ。まぁ剣よりもコイツは楽だからいいけどな」
そういって肩に担いでいる筒を手で叩きます。
ま、待ってください、そんな事をされたら聞かずにはいられませんよ!?
「そ、それは何ですか?」
「これはタンネンベルク・ガンっていうん――」
「おいバカ! そんな事までしゃべるんじゃない!」
「あ、っと、悪いねシルビアちゃん、こいつは秘密だ。見なかった事にしといて」
「わかりました。おしゃべりな門番さんなんて居ませんからね」
しかしその程度の注意で終わり、手を振ってお別れしました。
タンネンベルク・ガン? 木の棒と鉄の棒がくっ付いていましたが棍棒の
とはいえ困りました、こんなに簡単に名前と形が分かってしまいました。
どうやって誤魔化しましょうか……
「お帰りなさいシルビア。今日は何かいいことがあったのではありませんの?」
大使館に戻ると早速パルサー様がいらっしゃいました。
毎日の事なので慣れましたが、王族が毎回お出迎えなんてどうかしています。
「ただいま戻りましたパルサー様。今日もコルト様のご機嫌はナナメでした」
「今日も不機嫌なのね。それで兵士達とはどうなのかしら? 随分と仲が良さそうに見えましたわ」
やっぱり誰かがあの場にいたのですね。
つまりソレがどういう形かくらいはご存じなのでしょう。
とはいえ簡単に言う訳には行きません。
「訓練が大変だとぼやいておいででした」
「ふぅ~ん。何か新兵器とかは使っていませんでしたの?」
「新兵器……そういえば木の棒と鉄の棒がくっ付いた物をお持ちでした」
「あらそんなものがあるの? 何という名前なのかしら」
「確か「たんねんべるくがん」とか言っていました」
「たんねんべるくがん……そう。木の棒と鉄の棒がくっ付いていてどう使うんですの?」
「さぁ私にはなんとも」
「それもそうね。お疲れ様、仕事に戻ってよろしいですわ」
今日も何とかやり過ごせました。
あのご様子ならタンネンベルク・ガンの形はご存じだったのでしょうが、新情報として名前が判明したといった所でしょう。
それにしても私、どうして王族とこんな駆け引きをしているのでしょう。
もっとこう、国の為になる話なら喜んでするのですが。
あ、一応は国のため、になるのでしょうか。
それにしても兵器の情報をあっさりと漏らす兵士なんて……いえ、もう必要のない兵器だから……なのかしら。
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