第113話
ディアマンテ龍王国に来て三ヶ月が過ぎました。
龍を探し出すという目的はいまだ果たされていません。
パルサー様達は龍を探し、私は化石の発掘を手伝っています。
パルサー様とサファリ様、キャラバン様は山に入り森や川などを探しているため、パルサー様の水色と銀の長い髪は泥で汚れ、高級な作業着は枝で破れています。
サファリ様もふわりと左右に分かれた茶色っぽい黒髪がボサボサです。
お付きの人も数名居ますが、そちらはもっとボロボロ。
一日の終わりに私はパルサー様の、キャラバン様はサファリ様の体を綺麗にしていますが、まさか王族である御二人がずっと捜索をするとは思いませんでした。
それだけディアマンテ龍王国との繋がりを重視しているのでしょう。
「見つからないね。シルビアの方は何かあった?」
「いいえ、こちらもめぼしい物は何も出てきません。小さな骨の化石が出て来るだけです」
食事が終わりリビングでお茶を飲んでいますが、サファリ様でさえお疲れなのでパルサー様は顔にこそ出しませんがかなりお疲れの様です。
軽く打ち合わせをして休んだ方が良いでしょう。
更にひと月が経ち、龍なんてやっぱり居ないのではないか、と思い始めた時でした、化石の発掘現場で巨大な骨を発掘しました。
最初は何かわかりませんでしたが、ハケで表面の土を丁寧に落としていくと全貌が見えてきました。
男性研究員さんと一緒に見つけましたが、これは……頭?
「これは頭でしょうか」
「形から見て頭で間違いないでしょう。やりましたねシルビアさん! 遂に龍がいた証拠が見つかりましたね!」
横顔らしき巨大な頭の化石。
一見すると犬の様にも見えましたが縦に長く、口が少し短いです。
それに犬の様に口が細くなっておらず、頭の高さからそのまま前に骨が続いて口になっています。
驚きました、以前発見された巨大な爪は巨大なワニの可能性を考えていたので、ワニとは似つかない頭の化石があるなんて思いませんでした。
やはり龍は存在していたのですね。
「さあシルビアさん、人数を揃えて頭の発掘を進めましょう!」
発掘は慎重に進められ、龍の頭の全貌が分かったのはさらにひと月が過ぎてからでした。
牙はもちろん口が大きく、ヒト一人くらい丸呑みできそうです。
それに首の骨も少しですが残っていましたので、どんな体勢で立っていたのかもわかるかもしれません。
龍が見つからなかったのは残念ですが、なんとか成果を出せたので安心しました。
それからは大忙しです。
発掘した頭の化石を慎重に博物館に運び、
ここまで来たら私の出番はありま……まだまだありました。
化石の説明文に書く内容の打ち合わせ、発見した時の感想、どのような龍だと思うかなどの予想まで聞かれました。
私は素人なのでそんな事を聞かれても困ります。
そして正式な龍の頭の化石発表の前日、お城でパーティーが開かれました。
「よくやってくれたパルサー殿! よもやこれほどの成果を出してくれるとは思わなかったのであるぞ!」
「ありがとうございますアウトランダー
このパーティー会場には貴族だけでなく、発掘や龍の捜索に関わった人が大勢招待されているので、半数以上が平民です。
なので一緒に発掘した研究員さんもいます。
おや? その研究員さんがキョロキョロしながらこちらに駆け寄ってきました。
「や、やあシルビアさん、た、楽しんでますか?」
「ありがとうございます。美味しい食事と会話を楽しんでいます」
「そ、そうですか。それは良かった。えと、その、は、発掘は大変でしたね!」
「ええ本当に。しかしこうやって龍の頭を見つけることが出来たので、苦労が報われたという物です」
「そ、そうですね! しし、シルビアさん!」
「はい?」
「シルビアさんはその……このままディアマンテ龍王国にいるんですよね?」
「いえ、私はもう少ししたらエルグラ――」
「おおそれはいいのである! シルビアよ、お前はこのままこの国に残るがよいぞ!」
どこからかアウトランダー
残る気はないのですが、まるで決定事項化の様に会話を進めていきます。
流石にお手伝いに来てそのまま残るというのは違う気がしますが、私が否定した所で勝手に決められてしまうでしょう。
これを断る事が出来るのは……
「アウトランダー
「なに! シルビアにそんな相手が……残念だが仕方あるまい」
サファリ様の言葉に驚き残念そうなアウトランダー
なぜ研究員さんが? ああ、この数ヶ月で仲良くなりましたからね、これでお別れなのは確かに寂しいです。
「シルビアにはウチの末っ子との婚約を考えていたのだが、うむ、仕方がないのであるな!」
いえいえ、王族と平民、しかもメイドとの婚約なんてあり得ませんからね?
そもそも末っ子が誰かも知りませんし。
翌日は龍の頭の化石が展示されることもあり、朝から博物館には大行列が出来ていました。
ああ、なんといいますか、自分が携わった物で人がこれだけ集まるというのは感慨深いものがありますね。
さて、この国での用事は終わったので帰り支度を始めましょう。
「シルビアにはもう少しこちらで手伝っていただきますわ」
ボストンバッグに荷物を詰め込んでいる最中、パルサー様が部屋にきてそんな事をおっしゃいました。
え、終わりじゃないんですか?
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