第107話
サファリ様との会話の違和感、その理由が見えてきました。
しかし確証が得られません。
このままではサファリ様を最強の三番手にする計画がダメになってしまいます。
ここは賭けに出るしかないですね。
私は一度大きく息を吸って覚悟と決めます。
「サファリ様は逃げたわけではないのですね。そう……あえてご自分に批判が集まるように行動をした、そうですね?」
……ダメですか、サファリ様は私の言葉に反応を、おや? 筆を持つ手が震えていますね、どうやら間違いではなかった様です。
では続けましょう。
「批判が集まる事で同様な事件が起きた際、そう、毒殺と言わずに暗殺全般をサファリ様が受け止めるおつもりなのですね」
サファリ様は筆を止めてインク入れに筆を入れると、お腹の前で指を組みます。
私を見ていますが睨むわけではなく、どちらかというと怯えているようです。
「なぜ……そう思ったんだい?」
「違和感があったからです。サンタナ妃殿下達に迷惑をかけたから仕事をしているのに、終わったらまた遊び惚ける。それに考えてみればサファリ様の行動はある意味一貫しています」
「一貫?」
「他人に迷惑をかける事をとても嫌がっています。今仕事をしているのはサンタナ妃殿下達への迷惑ではなく、王宮の他の人達に迷惑がかかるからではありませんか? サンタナ妃殿下達は交代交代で遊んでいますし、そちらへはあまり迷惑とは考えていないように見えます」
「ははっ! 僕がそんな事を考えていると思うの? とんだ妄想だ!」
サファリ様は大きな声で否定しますが、それを無視して話を続けます。
「他人に迷惑をかけないようにし、自分は遊んで周囲から白い目で見られようとしている……つまり自分は不要な人材であるとアピールしています」
「もうやめろ! そんな妄想は聞きたくない! もういい出て行け!!」
椅子を跳ねのけて立ち上がり初めて聞くような狼狽と怒りが混じった大声に、隣の部屋で待機していたサンタナ妃殿下達が大慌てで部屋に入ってきます。
「不要な人材ならば、暗殺されても誰も悲しみません」
「やめろ……いうな……言わないでくれ」
「サファリ様、あなたはいつでも他の王族の身代わりになって死んでもいいように、自分は不要な存在であることに勤めています、そうですね?」
サンタナ妃殿下達が驚いた眼でサファリ様を見ています。
サファリ様は何も言わず下を向いて何も言いません。
「サファリ、あなたそんな事を考えていたの?」
「ふ……笑って、ほら笑っていいよ。僕はあの事件の時にもう死んでいるんだ。死んだ人間がなに御大層な事を考えてるんだって笑ってよ」
「なに言ってんだよ! サファリは生きてるだろう!」
「その通りです。逆にサファリの考えに気づけなかった私達が笑われるべきです」
「サファリ何言ってるの? 私達は一緒に生きていく」
「
皆さんが机の前に立ち必死に言葉をかけます。
まさかご自身はすでに死んだ者として行動しているとは思いませんでした。
この方は一体どういう考えでここまで思い詰めてしまったのでしょうか。
「ありがとう……みんな……でも違うんだ、僕が遊び惚けているのはいつ死んでもいいようになんだ。せめて思い残すことが無いようにと、その日その日を楽しんでるだけなんだ……ただ怖くて、いつ死ぬかわからないのが怖かっただけなんだ」
「怖いと思うのは当たり前ですサファリ様。でもサファリ様は過去の恐怖を乗り越えて今もこうして立ち向かっています」
私はサファリ様の隣に立ち、震える手を握ります。
「それに怖くない人なんて居ません。自分を犠牲にして他人を護るなんて事、普通の人にはできやしません。とても素晴らしい行動です」
「そ、そう……かな」
「はい。ただ一つだけ、サファリ様は勘違いをされています」
「勘違い?」
「他の王族の方々はとてもお強いです。サファリ様だけを犠牲になさることを良しとしないでしょう」
「え? じゃあ僕がやって来たことは無意味だったの?」
「そんな事はありません。サファリ様のお覚悟のお陰で皆さんが強くなられたのです。しかしこれからは少し違う方法で皆さんを護ってみませんか?」
「違う方法で?」
「グロリア様のお命が狙われた理由は何ですか?」
「それはグロリア兄様が優秀だから、国王になられると困る人がいて」
「その通りです。ではグロリア様よりも優秀な王子が居たらどうですか?」
「えっと、そうなったらグロリア兄様が……あ、王位継承は長男だから継承は間違いないし、そうなったら……あれ? 命を狙わない方がいい?」
「はい。もっと優秀な国王が誕生する位ならグロリア様の方がマシ。そう思わせたら暗殺なんてしなくなると思いませんか?」
「なにその面白い考え!」
「面白そうでしょう? ではサファリ様、あなたにはグロリア様よりも優秀になっていただきます」
「……え? ええーー!」
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