第103話
「そして私は当時の主であるプリメラの命を危険にさらした悪魔教を滅ぼすために、進んでおとり捜査に参加し生贄となりました」
きっと予想以上の私の経歴に驚いたのでしょう、側室の四人は怖い物を見るような、腫れ物を触るような、そんな顔をしています。
改めて説明をすると、私、よく生きていますね。
「シルビアの事は城付きメイドになると聞いた時に説明があったわ。メイドにしておくには勿体ない経歴よ」
サンタナ妃殿下が真面目な顔で側室四人を見ます。
そして席を立つと私達を隣の応接室へと案内し、ソファーに座る様言われました。
他のメイドにお茶の用意をするように命令すると、サンタナ妃殿下もソファーに座ります。
「セドリック様が国王
「軍はいまいちわかりませんが、外交官たちは会いに来てくださいます」
「え? それってローレル様に会いに来た外交官との打ち合わせに、無理やり顔を出してるんじゃなかったのか?」
「キャラバン、ローレル様がそんな事を許すと思う? しかもローレル様はある程度はシルビアに裁量を持たせているという噂よ」
「おいおい、それはおかしいだろ? だって外交官だぞ? 何でもないメイドに何で決定権があるんだよ」
「あるらしい、いえあるのよ。シルビア、実際に何をやったか説明してくれる?」
「はい。一番大きな話は大使館を作る手続きをした事でしょうか。エルグランド王国とは距離がある国なので有用性をローレル様と共に
「もしかしてそれは、スリーヒルズ連邦のじゃじゃ馬娘ヒミコ王女の事かしら。まだ新しい国だから色々な情報が入ってくると聞いたわ」
「はいセレナ様。他にはスパイスや穀物類などの交易ルートも確立させました」
「ちょーっと待ってくれる~? 沢山話をするとリオの頭が追いつかないから~」
リオ様はホーミー様に寄りかかり目を回しています。
あまり口数が多くないリオ様だから、知らない情報がいっぺんに入ってきたのがまずかったのかしら。
「そうね、少し休憩をしましょうか」
サンタナ妃殿下の提案で皆さん大きなため息をついてソファーにだらしなく座ります。
ホーミー様はリオ様を起こして紅茶を飲ませています。
それにしても本当にこの方々は仲が良いですね。
妃殿下や側室という垣根が無いようです。
そんな時に部屋のドアがノックされました。
メイドの一人が入って来て「お客様がいらしました」と。
「今は……まあいいわ、気分転換になるかしら。どなたかしら?」
「それがサンタナ様、その……クリッパー様です」
「クリッパー殿⁉ 修繕科の長の?」
「はい、シルビアがここにいるなら丁度いいから、と」
また五人の目線が私に集まります。
そろそろ慣れてきましたが、クリッパーさんは何の御用なのでしょうか。
「お通しして」
一礼してメイドが部屋を出ると、すぐにクリッパーさんが入ってきました。
「やぁサンタナ妃殿下、いきなりで申し訳ないです」
「いえ、休憩をしていたので構いませんよ」
「それで今日の用事なんだが、メイド関連の問題が解決する目途が立ったので報告に来たんです」
五人の目が輝きました。
やはりこの方々も一部の横暴なメイドの行動には
それに目途が立ったと聞いて喜んでいます。
「遂に解決できますか。ありがとうございます、クリッパー殿には仕事以外の事でお手を
「いやいやかまわんですよ。それにウチの連中もかかわってましたからね」
クリッパーさんの話によると、以前私を部屋から出れないように細工をした貴族令嬢に手を貸し、他のメイドの嫌がらせにも修繕部の若い人たちが数名関与していたそうです。
最初は貴族令嬢に命令されていやいやかと思っていたら、なんと貴族令嬢に見初められたと勘違いし、進んで手を貸していたのだとか。
それで代々仕えるメイドにイジメをするなんてもってのほかです。
「ウチの連中の口を吐かせて関係した奴らを一人残らずグロリア様に報告したんです。なんで近いうちにメイドの入れ替わりがあるでしょう」
「わかりました、こちらでもグロリア様にお伺いを立てておきます。この度はありがとうございました」
サンタナ妃殿下と側室四人が頭を下げます。
私も一緒になって頭を下げますが、クリッパーさんから「お前は頭をさげないでくれ」と言われました。
「しかし……」
「そもそもウチの連中が直接お前に迷惑をかけたんだ。こっちこそ時間がかかっちまってすまん」
逆に謝られてしまいました。
「わぁ~、あのクリッパー殿が謝ってる~?」
ホーミー様が不思議そうにクリッパーさんと私を見ます。
ああそうか、クリッパーさんは古くから
そのお爺さんが私に謝っているので驚いたのでしょう。
「ワシからは以上です。すみませんね、いきなり来ちまって」
「いえ、お疲れさまでした」
クリッパーさんは順番にメイドの報告をしているようで、この後も行くところがあるそうです。
そしてメイド問題が解決か、と安心していると次の来客がありました。
「し、失礼します。料理長がいらっしゃいました」
「今日は来客が多い日ね。しかも城の重鎮ばかり……用事はなにかしら」
「それが、その、パンの件でシルビアがいるなら丁度いいから、と」
「パン? 以前料理長が言っていた白パンの事かしら。でもシルビアがいるから丁度いいとはどういう事?」
しばらくして料理長が入ってきました。
「こんにちわ妃殿下。以前お話していた美味しい白パンですが、シルビアの協力の元、作れるようになりました」
また五人の目が私に向きます。
やっぱり慣れません。
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