第73話
プレアデス
長い旅路でしたが、二度目なので行く時よりは随分と楽でした。
帰ってきたらまずは
「良くやった。まさか勲章を持ち帰って来るとは思わなかったぞ!」
謁見の間には沢山の貴族が集まり、私とローレル様の帰還を祝福してくれます。
「どれ、よく見せよ」
顔を上げて立ち上がり、胸に付けた
「これが大聖栄誉勲章か。確か
「騎士団大翼星章は細い線が放射状に広がり六角形を成し、中央には翼を広げた鳥が掘られた勲章でした」
「そうかそうか! ふっはっはっはっは! 気分が良いぞ! 今宵は帰還パーティーを開く、二人とも参加せよ!」
「はいでしゅ」
「はい」
夜になり、私達の帰還パーティーが開かれました。
「どうしたんでしゅか? 早く出て来てくだしゃい」
「だ、ダメです。これはダメなんです」
私は用意された部屋の扉を内側から押さえ、誰も入ってこれないようにしています。
ローレル様が呼んでいらっしゃるけど、こればっかりはダメなんです!
「なにがダメなんでしゅか? いい加減覚悟をきめてくだしゃ~い」
な、なんだか楽しんでませんかローレル様⁉
どうしてこんな事になっているんでしょうか、私は普通にパーティーを楽しみたかっただけなのに……
「出てこないなら強硬手段でしゅ。さあ、こじ開けてくだしゃい」
扉がドンドンと力強く押されます。
わ、わわっ! ダメですったら! こんな、こんなのあんまりです!
遂に押さえきれなくなり扉が開かれました。
「ふっふっふ、シルビアしゃん? どのドレスを……」
ローレル様が私を見て言葉をなくします。
ええ、ええわかっています、こんなキレイなドレス、私にはとても似合いません。
ほら、他のメイドさん達も目を見開いて驚いています。
「きれい……」
一人のメイドさんがそんな事を呟くと、他の人達から怒涛の美辞麗句が並べられます。
「シルビアしゃん、予想を超えてキレイになってるでしゅよ」
「まぁ! まぁまぁまぁ! 元が良いとは思っていましたが、ここまでの素材だとは思っていませんでした!」
「そ、そんな事ありません! ドレスに着られているだけです!」
肩を出した青いロングドレス。
軽くラメが散りばめられており、光が当たるとキラキラと光ります。
髪が伸びていたので三つ編みにして右肩に乗せていますが、恥ずかしくて髪で顔を隠しています。
「さあ行きましゅよ」
無理やり手を引かれ会場へと入ります。
会場は既にたくさんの人達で溢れかえり、静かな音楽と共に立食パーティーを楽しんでいます。
ううっ、こんなに沢山の人の前で恥ずかしい姿をさらすなんて。
「シルビア!」
女性の元気な声と供に私の視界が真っ暗になりました。
こっ、この柔らかい感触は!
「ぷ、プリメラ、苦しいです」
「もうなによ! 一年ぶりなんだから大人しく抱かれてなさい!」
相変らず豊かな胸に抱き付かれ、私はもぞもぞと首を動かして何とか口を出します。
ふぅ、久しぶりですね、コレ。
「お久しぶりですプリメラ。お元気でしたか」
「元気よ。ワタクシの体調管理は完璧なんだから、それよりもそのドレス、よく似合っているわ」
「ふふふ、ありがとうございます。そうですね、プリメラはいつも元気です」
「そうそう聞いたわ! クラウン帝国のやつらめ、私のシルビアになんて事するのかしら!」
「それはもういいですよ。お陰で勲章がランクアップしましたから」
「それもそうね。シルビアが帝国ごときに負けるはずがないわ」
いえ、流石に個人で国には勝てませんからね?
プリメラと楽しく会話をしているとリック様が来てくれました。
「シルビア……お帰り」
「お久しぶりですリック様。ただいま戻りました」
「うん……会いたかった……プレアデス
「ありがとうございます。お役に立てたのなら幸いです。リック様は……たくましくなられましたか?」
「ああ……グロリアお兄様に鍛えられたから……ね」
「ちょっと、二人の空間を作らないでくださいませんこと? 私の挨拶がまだですのよ?」
「リバティ様、お久しぶりです。エクストレイル伯爵領でお会いして以来ですね」
「手紙だけは欠かしませんでしたが、実際に合うのは数年ぶりですものね」
「はい。学園の皆様もお元気でしょうか」
「息災ですわよ。令息令嬢はしぶといんですから」
とても懐かしい顔ぶれです。
まるで学園に通っている頃に戻ったような感覚ですね。
他にもアベニール辺境伯、エクサ子爵、エクストレイル伯爵、フーガ侯爵、レパード公爵とも挨拶をしました。
皆さんお元気そうで何よりです。
ほっ、知っている人達が相手ならドレスを見られても……少し恥ずかしいですが、素直な感想を言ってくれるので安心です。
でもそれもここまで。
一通り知り合いとの挨拶が終わると、後は知らない貴族の方々とのおべっか合戦が始まりました。
つ、疲れます。
「うむ、一通り挨拶が終わったか」
最後になって
一同が頭を下げると、
あら? 何かあったのかしら。
「シルビア、お前は明日から王宮のメイドとして働け」
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