第49話
本当はもう少しフーガ様を見ていただきたかったけど、他の用事があるとはいえ無理を言って来ていただいたので無理は言えない。
ただ
自分を見つめる? それなりに自分をわかってるつもりだったけど、もっと自分を知る必要がある、という事かしら。
フーガ様の様子は少しだけ変化があった。
昼食からは少しだけ量を多くしたけど、一瞬だけ手が止まったけど全部召し上がられた。
多少なりとも改善されたのだから、
「シルビア~、チョット、手伝って~」
「わかりました今行きます」
私は相変わらずお屋敷でお掃除をしていますが、様子を見ながら次の段階に移らないといけない。
ある意味ではこちらの方が障害が多くて頭を悩ませている。
低すぎる税金をどうしようかしら。
お屋敷で働いてる使用人たちは、自分達の賃金が高すぎる事を理解しているので、寮を使っている人以外でも万が一の時に備えてカンパをしていたようです。
しばらくはそれでお屋敷内を賄えるでしょう。
しかしそれが無くなったら……
税金を数年かけて四十パーセントまで戻す、というのが現実的ですが、そんな長期ではカンパのお金が持ちません。
王都へ支払う分を待ってもらう? そんな事をしたらフーガ様の立場が危うくなってしまうわ。
そうなると商工会や大手の商人から融資を受けるしかありません。
「でもそれは後に回したいわね。もう少し別の角度から考えてみよう」
「どうしたの~、シルビア? つかれてる、なら休んだら~?」
「すみません、少し考え事をしていただけです。さあ、早く掃除を終わらせましょう」
それからしばらくは何も思い付きませんでした。
フーガ様の質素倹約を無くす時は、物語の美男美女のやり取りと街で見た子供のやり取りを見て、前代国王
なら次は? 同じ立場じゃなければ違う立場の人?
「税金に違う立場ってなに?」
「今日も、シルビアは、おつかれ~?」
「あ、すみません、すぐに掃除をします」
いけないいけない、まずは目の前の仕事を終わらせないと!
夜になりピノと一緒に本に書かれた物語を読んでいます。
また本にヒントでも載っていないかしら……そんな都合のいい話しなんてないわよね。
今日の分の物語を読み終え、私達はベッドに横になりました。
税金……税金……税金……あれ? 私ってメイドなのに、領民からお金を巻き上げる事ばかり考えてるわ。
なんだか罪悪感……でも貴族は常にそんな気持ちでいるのかしら。
フーガ様もエクストレイル様も、アベニール様も? ポルテ元男爵は……考えてなかったと思うけど。
貴族って大変だわ。
ポルテ元男爵と言えば、書庫だけは凄かったわね。
あの中に何か使えそうな物は無かったかしら? 税金とか領地経営とか。
う~ん思い付かないわね。
明日は仕事が終わったらフーガ様かデイズさんにお願いして、書庫に入れないか尋ねてみよう。
「書庫かい? 構わないよ。はい鍵」
デイズさんからあっさりと鍵を渡されたので、お昼を食べたら書庫で調べ物をしよう。
「シルビア、もう一緒に食事をしてくれないの……?」
ぼっちゃんが寂しそうな顔で話しかけてきました。
う、最近はフーガ様の食事量が通常に戻りつつあるので、食後の食事を用意する必要が無くなっています。
なのでぼっちゃんとも一緒に食べていないのです。
「申し訳ありません。私は一介の使用人なので、本来はともに食事をするのは良くない事なのです」
ああっ! 泣きそうな顔になってる! 懐いてくれてるぼっちゃんに対して冷たすぎたかしら⁉
えっと、えっと、そうだわ!
「なので食事はダメですが、午後のお茶なら何とかなると思いますよ」
「じゃあさ! 今日はバルコニーで一緒にお茶をしようよ!」
「ええ、わかりました」
何とか機嫌が直ってくれました。
ほっ、そうですね、私も
昼食が終わり午後の予定をメイド仲間と話しましたが、どうやら急ぎでやる仕事は無いようです。
これで心置きなく調べものが出来ますね。
借りた鍵を使い二階にある書庫に入ります。
「お、大きい。流石は侯爵家、男爵家とは比べ物にならない所蔵量だわ」
エルグランド王国の歴史や伝承だけでなく、各国の成り立ちや伝承まである。
あ地図があるわ、これはフーガ領の地図? ええっ! 世界地図⁉ あわわ、こんな物見ちゃっていいのかしら、かなり詳細に書かれているけど!
私が探しているのは経済や税制についての物だから、慌てて地図をしまって探し物を再開する。
これは違う……あれは? ……違うわね、こっちは……う~ん。
おっと、そろそろぼっちゃんとのお茶の時間だわ、休憩ね。
ぼっちゃんと二階のバルコニーでお茶をしていると、今までは無かった家族での食事時間の話を聞かせてくれました。
苦痛だった時間が楽しみに変わってくれたので、本当に良かったと思います。
「僕も一緒に本を読んでもいい? 将来のお嫁さんの手伝いもしたいし」
チラリと側にいるデイズさんを見ると、無言で頷いています。
「ええ、それでは一緒にお勉強をしましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます