第10話 ソワソントヌフ

 それより一時間程前、イヴェットは冷たい床で後悔していた。

 何でこうなるんだろう、いつだって旅行の計画は台無しになるのだ。今回はイヴェットだけでもメロディおばあちゃんの元に出掛けて楽しむはずだったのに、北に向かっているはずの時間に自分は猿轡を噛まされて床に転がされている。

 見張りは清楚な女性で、一人掛け用のソファーで優雅に紅茶を飲んでいる。三人組にいた女性とは別人だ。

(あんな女、声掛けなきゃよかった)

 あんな女、とはモルガーヌのことである。

 買い物帰りに打ちひしがれて蹲った彼女を見付けて、どうしてもそのまま立ち去ることが出来ずに声を掛けてしまった。仕方なく家に誘おうとしていたら三人組に襲われたのだ。

 助けようとせず逃げればよかったが父の恋人だ、彼女の正義感も手伝って本気で闘ってモルガーヌの代わりに捕まってしまった。

 後悔しかない。

 どうやら父の愛する女性と自分は合わないようだ。トゥーサンがモルガーヌと結婚したら、その時こそ自分は地方の学校に通った方がいい。

 寂しかったがそれはもう仕方がないことと覚悟を決めるのだ。父だけでも幸せになって欲しいと願っていた。

 しかしその前に人質交換だ。

 そうなるだろう、モルガーヌを助けようとして捕まったのだ。だが最後の瞬間父はイヴェットを助けようとするモルガーヌを制した。

(娘より女)

 嫌な考えが頭の中を駆け巡る。

(いやいや、それは警官として当然の行動ですよイヴェット)

 不審な連中に一般市民でもある女性を、市民を守る立場にある者が易々と渡せたりしない。父はそんな警官じゃない。

 第三者的な視点で考察して自分を説得する。

 父は自分より女を選んだ訳ではない、と。

「貴女……泣いてるの?」

 視線を向けている風ではなかったのに、直ぐに勘付かれてしまった。

 縛られているから涙を拭けもしない。泣いているのを見られるのは悔しかった。

「怖くなくてよ。貴女が暴れるから雁字搦めに縛っただけだもの」

 スカートを膨らませながらウェストをきゅっと締めるのは最近流行の形だ。首筋や鎖骨も覆った立ち襟も装飾過多ではなくシンプルだが品良く見せている。魔法で変声しているのだろうか、理知的で落ち着いた響きのある声で、聴いていて気持ちいい。

「もう暴れないなら一緒にお茶を飲めるようにしてあげてよ」

 上流階級の丁寧な美しい発音だった。

 発声出来ないので頷くと、女はスッと優雅な仕草で上に伸ばした。

「先ずは籠ね」

 ふわりとイヴェットは浮かんで、《鳥籠》の中にいた。彼女を縛っていた《グレイプニル》が消えて自由になる。

「さあ座って、お茶をどうぞ」

 女の使い魔が香りの良いお茶を運んで来る。

「名前を訊いてもいい?」

「ヴィルジネよ」

「あんた達誰よ?ただの犯罪者って訳じゃないでしょ。何故モルガーヌを襲ったの?」

 三人組は全員格闘技を習熟していた。イヴェットも父から習ったから分かる。

「気を付けて、知り過ぎると生きて帰れなくなってしまってよ」

 イヴェットは息を呑んだ。

 その様子にヴィルジネは品良く笑った。

「理由を知りたくて?」

 問われて急いで頭を振った。

「それがいいわ。貴女が賢い子だって知っててよ」

 三人を相手にするような無鉄砲な真似はしたが、殺されるとは思わなかった。だがヴィルジネには言行一致の恐ろしさが何処かにある。

「私も貴女は気の毒だと思っているの。モルガーヌが貴女の家の近くに行かなければ巻き添えは喰わなかったものね。無事にお父様の元にお帰ししたいわ」

 是非そうであって欲しいとイヴェットも願っている。

 お茶を溢しそうになって我に返った。うつらうつらしてしまったらしい。美しい茶碗を落として割ってしまったらヴィルジネの機嫌を損ねる気がした。だが眠気はしつこくて追い払えない。

「あれ?」

 落としそうになった茶碗を使い魔がスッと抜取った。

「あ?」

「疲れたでしょう?少しお眠りなさいな」

 抗おうとして抗えずイヴェットは眠りに落ちた。



 脱獄犯のセルファチーが偽名で購入した家のタレコミがソワソントヌフにあって、真偽を確かめると夜間に限って人の出入りが認められた。ソワソントヌフにとってはセルファチーよりゴメスが本命だ。長い間追っていたのだ。

 放っておかれて野放図に伸びた木々に屋敷が隠されていて、その屋敷の見取り図も管轄部署から直ぐに取り寄せ一味の逮捕の計画を立てる。

 慎重にしかし迅速に計画を進め、今日一網打尽とするはずだった。

 なのにダンテが来ない。交信を無視して応答もしない。

 会計方に問合せると昼休憩に出たまま帰っていないとの返事に、ダンテの官舎に人をやったがいないとの報告だった。

 細身で長身のジュリエンヌ・ルイゾン・アイヤゴンは待った。夜は都合が悪いと聞いていたがそれ以外の予定は入っていないはずだ。捕物があることは打診していたのだから別の予定は入れていないはずだ。

 なのにダンテは現れず行方も分からない。

 無視しているのだ。ソワソントヌフからの召集に。

「班長、どうします?」

 これ以上待てば班員の緊張感が抜けていくだろう。心を決める為に長い銀髪を束ねた。

 ソワソントヌフの班員は誰も無能ではない。彼らだけでもやれる。

「ダンテは来ない、だが問題ない。それ以外は計画通りに進める。十分後にアッシュから突入。それが合図だ」

「了解、連絡します」

 班員達も自分達だけで充分やれると思っていた。ダンテは血を怖がって直に捕物には参加しなかったからだ。

 しかし思った以上に彼らはダンテの支援に慣れてしまっていて、凶悪な脱獄犯とアルトワ・ルカスに巣食うスパイという大手柄を逃してしまった。

《鳥籠》ごと小さくされたイヴェットはヴィルジネからロレンシオの手に渡り、その存在をソワソントヌフに知られずに連れ去られた。

 隠れ家ともしもの時の脱出ルートは同時に手に入れる。不意を突かれても彼らは冷静に行動し、ロレンシオとセルファチー達を逃がした。

 逃亡する際の一時的待避所で、彼らは汚れた服を着替えた。必要な個人手形と資金も隠されている。

「仕方がない。モルガーヌを諦めろ。聖ルカスに落ち着いたらもう一度計画を立てればいい」

 渡りに船とロレンシオが驚く程あっさりとセルファチーが同意する。あれ程執着していたのにまるで眼中にないようではないか。

「グズグズして悪かったよ。このまま聖ルカスに行こう」

 我が耳を疑う殊勝な言葉まで発せられた。

「ゴメス、もう一つの隠れ家も知られてたようだぞ。ペッシともスコルピヨーネとも交信がとれん」

 カプリコルノが告げた。警吏が迫った時、彼は外に居て先に待避所で待っていたのだ。

「セリーヌともだ」

 目線で問われて恐る恐るセルファチーが口にする。

「カプリコルノ、ビランチャ、レオーネ」

 男二人と女一人、それが今いる配下だ。三人は指令を待った。

「お前達でセルファチーを聖ルカスに連れて行け。ポロヴァネに一旦出てから聖ルカスに向かうんだ。いいな」

「了解」

 資金の大半を渡す。

「俺は逃げ回って警吏を攪乱する」

「《鳥籠》はどうする?」

 中では目の覚めたイヴェットが蒼ざめて成り行きを見守っていた。

「この子いいな、連れて行けないかな?」

 小さな美しい娘が《鳥籠》に囚われている。まるで何かの物語を再現しているようでセルファチーは魅せられてしまった。

「こんな魔法は初めて目にするよ。次の作品は人体を小さくして作ってみたらどうだろう?」

 今する質問ではない。

「骨格の形も肌艶もいいから材料にもってこいだ」

 嬉しそうな巨大な中年男に、イヴェットは恐怖を感じると共に鳥肌が立った。

「近付くんじゃねぇ、薄気味悪いオッサンがニタニタしやがって」

 精一杯虚勢をはる。

「オッサンン!」

 先生と慕われ紳士を自負してきただけに「オッサン」の一言には大きな衝撃を与えられた。

「私をオッサンだと…」

「間違いなく厭らしいオッサンじゃない。目尻てれ~って垂らしてさあ。美しいあたしをどうしたいって?砂吐くわ」

「な…何てことをこの口汚い生意気な小娘が…」

「は?あんた何者だっつーの?変態でしょ?正真正銘の!そんな奴に言われたくない!」

 変態ではない、正真正銘の変質者で猟奇殺人鬼だ、とロレンシオは訂正してやりたかったが黙っていた。

「この…この…」

「きゃあっ」

《鳥籠》をガシッと掴むとセルファチーは怒りに任せて乱暴に振った後ヴァランタンに押し付けた。

「この生意気な娘を切り刻んでやれ!」

《鳥籠》を受取りはしたが、ヴァランタンはどうしたものかと途方に暮れた。

「どうした?早くしないか!」

 パアン

 ロレンシオの平手がセルファチーの頬を音高く叩いた。

「落ち着け、ヴァランタンに娘を《鳥籠》から出す力はない。武器も取り上げてある。知ってるだろうが」

「私をぶった……」

 乙女のように頬に手をやりセルファチーは震えていた。それが気色悪くてロレンシオは生理的嫌悪を隠せなかった。それは彼だけではない。振り回されたイヴェットは籠にぶつかった痛みもあって、吐きそうになるのを堪えていたから彼女以外だ。

「この娘の処理は俺がしておく。行け」

 連れ出されながらセルファチーの目はロレンシオを追っていた。


 亡くなったフレデリークの遺体は家族に引取られた。エリクは妻に先立たれて息子以外親族がいない。二人の息子はまだ幼く父の葬儀を任せられる訳もなく、同僚達が行うことになった。職務中の殉職だから費用は国から出る。

 ヒクマトはフレデリークの遺体の引き渡しに立ち会うと同僚達と合流した。

 久方振りの家族旅行に旅立つトゥーサンに報せるのは不憫で、全員一致で帰ってから報告することに決まる。

 幼い息子達は仕事で留守にする時には、友達で大家族のルトフィ―・イェシルメン宅で面倒を看てもらっていたから、何の疑いも持たずにイェシルメン家で可愛がられて過ごしていた。

「うちの子達と走り回って遊んでる」

 子供達の様子を尋ねられてルトフィ―は答えた。「うちの子」と形容しても彼の子ではない。未婚で子もいないから三世代五家族が同居する我が親族の子供達の意味だ。

「ヒクマト」

 ぼうっとしているように見えるヒクマトにジョアンナは声を掛けた。

 助けようとして助からなかった。誰よりも彼女が辛いはずだ。

「大丈夫やでうちは。この仕事も長いんやし…感情の始末の仕方は心得とる」

「面倒なことは私がやるわ」

 書類を申請し葬儀場を借りねばならない。借りれば葬儀の準備が始まり、悲しんでいられないのは残された者への思い遣りだろうか。

「おおきに」

「今夜はうちにおいでよ。呑もう」

 背中を軽く叩くと、ヒクマトは頷いた。

「うん、お言葉に甘えまして…」

「待ってる。じゃ、ちゃっちゃと済ませてくるわ」

「おおきに、頼むわ」

 頼もしい友は他の同僚と役割を割り振る。

 こんな時は仕事で忙しくしているか呑むのが一番だ。ヒクマトはパコと一緒に捜査に戻った。

 班長代行はジョアンナがしている。が新しい事件はなく他班の応援だ。裏取り捜査を進めていた。

「おや?」

 何かに気付いたパコがあらぬ方を見やった。

「どうした?」

「ソワソントヌフが捕物してるんだ」

 彼らが張った結界が破られたのが伝わって来る。

「この近くだね。結界を新人に任せたのか…」

 ソワソントヌフと聞くだけで不愉快だった。だが、ならば追っているのはゴメスだ。

 ヒクマトの様子からパコが察した。

「覗いてみる?川中島の一つだよ」

 川が視界に入ると視界を横切って逃げていく一団がいる。

「ゴメス」

「セルファチーだ」

 二人は顔を見合わせた。

「やっぱうちらに捕まえろいうことやんな?」

「それ以外考えたくないだろ?」

 密かに追跡を始めた。


 応援を待っている暇はない。ヒクマトが乗り込むとパコは待避所の周囲に結界を張った。結界の張り難い場所を選んでいるがパコの熟練の腕があれば何てことはない。一応ソワソントヌフには一報する。

 静かに潜入したヒクマトは一団を確認すると不意打ちした。

獅子の顎マショワァー・ド・リオン

 獅子はレオーネをその牙にかけ、勢いも衰えずビランチャを襲う。

「うわあああぁ」

 ヴァランタンに庇われながら情けない悲鳴を上げたのはセルファチーだ。

「ヒクマトか⁉」

 聞いた通りの強さだった。レオーネとビランチャが不意を突かれたとはいえ手も足も出ず瞬殺されてしまっている。

 セルファチーの襟首を掴んでカプリコルノは逃げた。

 出て来た部屋に飛び込むと間髪入れずロレンシオの攻撃が放たれる。

竜の爪アルティーリョ・デル・ドラゴ⁉〕

 その威力に壁まで裂かれるが、ヒクマトは難なく防いだ。

「見晴らしがようなったやん。おのれの姿がよう見えるで」

 獲物を見付けた猫のような表情だ。女のこの表情は始末に悪い。

 同僚を庇いながら闘ったヒクマトに仲間が九人もやられた。ロレンシオはその強さを直に知っていた。

竜の爪グリフ・ドゥ・ドラゴン⁉〕

 敵が使った技でヒクマトはさらに開口部を広げた。ゴメスの技より切れ味が鋭い。

「爪で女に勝とうなんて無理しぃなや」

 黒く塗られた爪を誇示する。

「性悪女が」

「悪もんにそう言われたら逆に褒め言葉やん。好みでもないし、名残惜しいけど邪魔が入らんうちに終わらせよか」

「どうかな?」

 後ろに隠していた《鳥籠》を翳した。

「人質?」

 そうもあろうかと後ろに移動したイヴェットはヒクマトに背を向けて柵に貼り付いた。

《籠》に封じて籠ごと小さくする魔法は知っている。難易度が高い魔法だ。だが、人質の姿がヒクマトには見え難かった。

「ちっ」

 舌打ちして《鳥籠》をロレンシオが回すが、そうはさせじとイヴェットはまた見え難い後方に走って背を向けてしまった。

 またロレンシオが《鳥籠》を回し、イヴェットが後方に走った。

 さらにもう一回転、イヴェットが後方に走る。

 もう一回転、イヴェットが走る。

 段々意地になってロレンシオが回転させるとイヴェットも負けじと走るが繰返される。

「ちょこまかと小賢しい!」

 このまま捕まっているのも何をされるのか恐ろしいが、さりとて人質として利用されヒクマトの足を引っ張るのもごめんだ。

 ロレンシオは《鳥籠》をグルグル回しイヴェットが懸命に走る、しばらく追い駆けっこが続いたが、我に返ったロレンシオに横に振られて終わりとなった。また柵に身体をぶつける。

「きゃあっ、いったぁ」

 イヴェットの頑張りは認めるが、距離は近い、ヒクマトはイヴェットが囚われているのが判った。

「イヴェット!、なんでや?」

 トゥーサンは何をしている。

 ヒクマトがイヴェットを知っていてロレンシオは説明が省けた。

「彼女は勇敢だ。流石は聖女の国だな。女が強い」

 本気で褒めている。

「父の恋人を助けようとしたんだ。そんな価値もない女なのにな」

「何をーっ、グッ」

 怒るイヴェットの口をまた振ることで止めた。

「イヴェット、必ず助けたるから大人しくしとき」

「それがいい、では先ず結界を解いてもらおうか」

 強いパコの結界をカプリコルノは破って逃げられずにいた。その間に一報を受けたソワソントヌフが転移で駆け付けていている。

「地下を使え」

 絨毯をどけてカプリコルノは地下への入口を開いた。セルファチーは襟首を掴まれたままで、それにヴァランタンが続く。

「外の連中にも通話しろ!イヴェットがここにいると」

 それはパコ経由ですでに発信されている。だがソワソントヌフは突入する気なのだ、ヒクマトは冷汗をかいていた。

「ソワソントヌフは…応じない」

 それを告げるのは人質を取られた側としては苦しい。人質の価値無しとして、相手の気分次第でイヴェットはどうにでもされてしまう。

「アイヤゴンか正真正銘の性悪だな」

「その通りや」

「勿論お前を人質にしても無駄だな。では俺が降りたら地下への戸を閉めて絨毯で隠せ。なるべく時間稼ぎするんだ」

「そんなこと…」

 籠が振られた。

「分かった。彼女を傷付けるな!」

 ニヤッと笑うと梯子も使わずロレンシオはひらりと地下に降りた。

 言いつけ通り戸を閉め絨毯で隠す。

 パコの制止も効かずソワソントヌフが突入して来た。

「連中は⁉」

「逃げてもた」

「貴様!勝手なことを」

 がヒクマトの胸倉を掴んだが、

「構うな、追え⁉」

 アイヤゴンの叱咤が飛んだので乱暴に彼女を壁にぶつけた。

 時間を稼ごうとしても地下への道は簡単に見つけ出され、ソワソントヌフの班員が追った。

 二人切になるとアイヤゴンが問うた。

「何故我々を待たなかった?」

「イヴェットが人質でなかったら、うち一人ですんでたからやん」

 挑発的な視線で答える。

 バシィッ

 強烈な平手打ちが放たれたがヒクマトは倒れたりしなかった。二発目、三発目が放たれるが堪えた。

「つけあがるな!才能があるのに上を目指さないクズが⁉所詮は良い格好つけなだけだろうが。力を出し惜しみして、見せつけて楽しいか!」

 冷たい蒼い瞳に憎しみが宿っていた。一人で敏腕スパイ数人を倒せる実力がありながら、警察機構の底辺から上を目指そうとしないで、のし上がろうとする人間を嗤っている。彼女にはそう思えた。

「これで済ませてもらえると思うな!このことは必ず問題にしてやるからな」

 その腕に銀の腕輪が光っている。トロザで転移を許される腕輪だ。

 一歩前に出たヒクマトは手に軽い電撃を乗せてアイヤゴンの鳩尾に食い込ませた。

「そんなんどうでもええねん」

「ぷ」

 強制的に大きな息を吐かされてアイヤゴンは倒れる。

「ちょ…どうするんだよ…」

 覗いていたパコが慌てて倒れる彼女を支え、ヒクマトは銀の腕輪を抜取った。

「ヒクマト!懲戒処分になるぞ!」

「構へん。ソワソントヌフはイヴェットに構わんとゴメスを捕まえようするやろ。うちはイヴェットを助ける」

 絶対そうなる。それはパコにも分かったからヒクマトを止められなかった。

「分かった」

「トゥーサンと連絡とったって」

「ああ、トゥーサンはどうしたんだろう?」

「知らん訳ないやろけど、もしものことがあるからな」

 パコの背筋に冷たい物が奔った。

 ほな行くわ、と彼女は消えた。

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