第6話 雑談の才能

あなたは、世界で起きている出来事を理路整然と説明することはできるだろうか。


私はできない。


複雑になり過ぎた社会の全てを理解したかのように話す人間が、テレビや動画、SNSでヒーローになっていないか。一人の人間に専門的な知識や経験を求め過ぎてはいないか。


どこかの国の偉い人のように、強い発言をする人間になびいていないか。

自分の頭で考えることを捨てて、情報の波に翻弄されていないか。


言いたいことが言えない自分は、自分の感覚や感性、直感を信じていないわけではない。不確かな情報と少ない理解度で自分の意見を言う行為は、格段、勇気のいる社会状況になっている。


では、どのくらい勉強し経験を積んだら、自分の意見が言えるようになるのか。


そんな基準は存在しない。


小さな子どもだって意見をする権利はある。

選挙権が18歳に引き下げられたのだから、近所にいる子どもたちの意見は重くなってきたはず。

若者の考えを聞き入れ、自由な発言ができる社会でなくては、未来は暗い。


コロナ禍、マスク着用と同様に、無駄口を叩くな、解答権は無いと口を封じられたような気がした。合わせて、オンラインの普及により、無駄な移動時間や人の機微、ジェスチャーの読み取りが減った。井戸端会議で意欲を保っていた人たちのエネルギーはどこに向かうのか。


私はたまに絵を描くが、ラフスケッチ(大まかなスケッチ)をたくさん描く。描こうと決めたイメージは1時間後には別のものに変わっていることもある。何を表現したいのかなんて、とりあえず描いてみないと分かるはずがない。


意味のある言葉や素敵なことを言うために、黙って考えても何も出てこない。とにかく、自由に人と雑談したり、書いたりしているうちに、輪郭が見え、ぽっと真相に迫れることもある。


今、私たちの生活に必要なことは、雑談力(ラフスケッチ)なのではと考える。


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