第2話 凡人の才能2
待ち合わせ場所には、白髪頭で黒縁眼鏡の老人が座っていた。
「こんにちは・・」
お互い軽く会釈をした。
老人は、コーヒーを飲んでいた。
私は、話しやすい雰囲気のある老人に、少し安心した。
ただ、こんな老人がSNSを使っているとは信じがたかったが・・
自分には特技が無く、日々の仕事や生活に疑問を持ち始めていることを話した。
老人は、微笑みながら、私の話をゆっくりと頷きながら聞いてくれた。
私が注文したコーヒーを飲もうとした瞬間に、老人が立ち上がった。
穏やかな表情から鬼の形相に変わり、意味不明な暴言のようなお経のような言葉を発して天井を見つめ唾を吐き出した。
私は老人を見つめたまま、思考がストップしてしました。
店員が慌てた様子で老人に近寄ると、老人は手に持っていたコーヒーカップを投げつけた。
私は、その瞬間に目が覚め、身の危険を回避するべく身をかがめた。
周囲の他の客たちは、こちらを凝視している。
身をかがめることしかできない自分を自覚し切なくなり、このままではだめだと思い立った。
私は、老人の肩を両手で抑え、力ずくで座らせた。
老人は白目を剥いてテーブルにうつ伏せになり泡を吹いていた。
店員さんに救急車を要請したのは私だった。
老人は
野球部時代、癲癇発作を起こす田中という同級生がいた。
4番を任されていた田中は時々、発作を起こした。
私は、田中が発作を起こしたときだけ、代打で出場していた。
もちろんいつも空振り三振。
田中の面目は保っていた。
その経験から、癲癇発作を起こした時の対処法だけは知っていた。
その後、老人は救急車で病院に運ばれた。
二人分のコーヒー代を支払い、病院へ同行した。
私は話の途中であったこと、命を救ったのだから何かあるのではとわずかな期待感をもち、老人の回復を待った。
しばらくして、発作が治まった老人との面会が許された。
穏やかな表情をした老人は私にこう言った
「あなたは誰ですか?何か御用でも?」
私は、自分に隠されていた才能を思い知る機会となった。
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