異世界転生したら神以上に強くなってしまったんだが?

ねくしあ@7時9分毎日投稿

プロローグ

 2022年に書いた作品ですが、2024年の今、どれほど実力が上がったかを試すために改稿してみました。もし旧版を見てみたいという方がいましたら以下のリンクよりご覧ください。感想など頂けますと嬉しいです。 

 https://kakuyomu.jp/shared_drafts/4RQSU17gxozGq60ekRU0WOUunNidubT2

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「はぁ……今日も学校疲れた。もうそろそろ冬休みだが……わりとそれまでが長いもんなんだよな」


 この独り言を呟く少年は時田 空――もとい僕。どこにでもいる至って普通で平凡な高校一年生。

 そんな僕は今日も今日とて部活に励み、帰った頃には太陽が傾いて地平線の下へと落ちていく時刻。


 その輝きを横目に、日課の如く画面に向かっていた。


「ん? なんだ――この光は?」


 キーボードの上で動かしていた手がふと止まる。


 今は冬。まして夕方ともなれば、ほぼ夏の夜と変わらない暗さになる。それが気づくのを早めたのだろう――窓の外が突然明るくなったのだ。

 明らかに太陽より数倍明るいその眩しさに、胸の中で漠然とした焦燥がうずまき始める。


「えっ……? 一体なにが起こって――」


 焦燥が不安へと変化し、居ても立っても居られなくなった僕は急いで窓の外を見る。すると、真紅に燃えた何かが見えた。


 ――それが、燃え盛った隕石のようだと思えたのは勘であることを願うばかりだな。


「はぁ!? 何が起きてるんだ!?」


 隕石の衝突まで「あと数分だろう」というのを直感で理解できるほどの近さだった。心なしか重力が強まった気もしている。それがどうにも自分の勘が正解だという証明な気がしてならない。


「あぁもう! なんでこんな事になるんだよ!」


 窓を開け、白い靴下のままでベランダに降り立つ。


 ――人生の終わりをもたらすものがこんなに近くにあるのに、その終わりをどう迎えようか、なんて考えることは殆どしなかった。


「はぁ……どうせなら隕石の光とかを目に焼き付けてから死ぬとしよう。恋人もいないわけだし。多分誰かに通話かけてもパニックで話にならないだろうな。あー、早く落ちてこないかな!」


 笑い混じりに隕石の落下を、自らの――世界の全生命体もなのだが――死を願う。多分、一番パニックになっていたのは僕だったのだだろう。


 そして数分後――恐らく二分くらい経った後。

 隕石ひかりが更に近くなり、その熱を感じ始めた。


 その一分後には目も開けられないほどの暑さになった。

 その一分後。全身から汗が滝のように流れるほどに暑く、熱くなった。


「あぁ……も……う僕は……ぬんだろうな……」


 掴まっている手すりが焼けるように熱い。

 むしろもう溶けている気がする。だが、僕の頭は痛み苦しみなんかより目の前の――あえて言うならば「奇跡」のことでいっぱいだった。


 これ以上はきっと、思考だけじゃ誤魔化しが効かなくなる。


 僕の余命は一分。それが、このバカな脳みそが弾き出した運命。


 そして数秒後、隕石の全体が青く煌めき始めた。その光はとても――十六年の人生で一番というほど――綺麗だった。綺麗さに思わず目を奪われていた。


「あぁ……!」


 次第に霞む視界のことを端っこに追いやり、一秒でも長くこの光を見ていたい。無様に絞り出したような感嘆の声が遺言になったとしても。


 そして気づけば僕は、いつの間にか意識を失っていた。

 ――それが、俺の一度目の人生、最後に見た景色だったのである。

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