第4話

降車した乗客が、駅の階段をすし詰め状態みたいになって降りているのだから、聞こえないはずないのに。



工場のライン作業の商品ですらなく、本当は存在していないのかな、私。



人の流れに沿って歩きながら、浮遊感に似た虚しさを感じた。



こんな虚しさ感じたくない。

仕事以外の時間を充実させたい。

悶々と考えてても何も始まらない。

マッチングアプリでも登録してみるかな。

動かなきゃ。




私は暗い夜道を街頭に照らされ、自転車に跨りながら家までの帰り道を急いだ。



家に帰り着き靴を脱ぎながら「ただいま」と言うとすぐに「おかえり」と言う声が廊下を進んだ奥のドアの向こうから聞こえてきた。



これもいつも通りの毎日のルーティン。

たまに残業か、遊びか、私が帰宅した時に居ないこともあるけれど。



声の主とは一緒に暮らし始めて八年ほどになる。

三つ年上の実の兄だ。



何の資格もない派遣バイトの給料での一人暮らしは金銭的に厳しい。



兄の方が収入が倍以上あるので、家賃、光熱費は払って貰っている。



わたしは食費、通信費、交際費、雑費、つまり「自分のお小遣い」だけ稼げば生活していけるというわけだ。



その点においてはありがたいし、兄には感謝している。



お風呂に入り、すぐに眠れる準備を整えると私はベッドに横になり今、唯一の趣味ネットサーフィンを始めた。

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