甘美なる銀世界

Racq

―▶―

 空を見上げて、「雪がよく降る日だなぁ」なんて言葉をこぼしながら再び店内に戻った。


 今日は、とても寒い十二月二十四日の夜。あと少しで六時を迎えようとしていた。ここ最近はすごく冷える。はぁ、と息を吐けば、それは白くなって天へ消えていくほどだ。その寒さで手が冷えるのに加えて、普段から冷え性の私には、カイロは癒しそのものである。



 私は、街中のあまり人気でないケーキ屋でバイトをしている。もう一年と半年になるけど、まだまだ実力は新人の域を抜けない。本当は自分でケーキを作りたかったのに、向いてないからと接客係になってしまった。ケーキ作りは、いつも自宅で練習している。でも、上手くいった試しがないから接客業に回されても仕方ないんだろうけど・・・。

 そんな接客業でも、楽しみはある。それは、お客さんとの交流だ。人気がない店だからこそ、ゆったりお客さんと話ができる。家族や恋人の誕生日のため、試験等の合格祝いのため―――。理由は様々だけど、そんなお客さんのストーリーを聞くのがとても楽しい。こんな味のケーキはありませんか?そう尋ねられたなら、蓄え続けた知識の出番だ。お客さんの要望を聞いて、好みに合いそうなケーキを提案する。何より、もう一度来店された時に「また来ちゃいました」なんて言われてこの上なく嬉しかった。


「いらっしゃいませ!」


 今日もお客さんが来る。

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