12-6 ダミアンの言い分

「ダミアンッ!」


門の中へ飛び込んでいくと、そこにはダミアンとイアソン王子が向かい合って立っていた。


「姉さん?!アルバイトじゃなかったの?ひょっとして僕がいるから早退してきてくれたんだね?」


ダミアンが私を見るなり、パッと笑顔を見せた。


「何?姉さんだって?それじゃ…」


イアソン王子が驚いた顔で私を見た。


「申し訳ございません。イアソン王子。弟が失礼な真似をしたようで…お詫び申し上げます」


私はイアソン王子に謝罪すると、次にダミアンを見た。


「ダミアンッ!こんなところで何をしているの?あの方は王子様なのよ?!」


しかし、ダミアンは私の言葉が耳に入っているのか、笑顔で話しかけてくる。


「姉さんがアルバイトに行ってる間、姉さんの部屋で待たせてもらおうと思って寮母さんにお願いしたら、ものすごい剣幕で反対するんだよ?いくら姉弟の関係でも勝手に女子寮に入れないって。そうしたらいきなりあの人が現れたんだよ。」


ダミアンはチラリと背後に立つイアソン王子を見た。


「たまたま寮の前を通ったら、ものすごい騒ぎが聞こえたんだ。それで様子を見に行ったら、そいつがいた」


イアソン王子は余程腹に据えかねているのかダミアンを睨みつけ…ルペルト様に気が付いた。


「ん?ルペルト?何でお前がいるんだ?ひょっとしてロザリーと一緒にいたのか?」


「え?誰だって?」


ダミアンはルペルト様を見た。


「ええ。そうですよ。イアソン王子」


ルペルト様は笑顔でイアソン王子に返事をすると、次に私に近づいてきた。


「ロザリー。こっちにおいで?」


ルペルト様は私の肩を掴んで引き寄せるとダミアンを見た。


「君…ダミアンだっけ?あんまりお姉さんに迷惑をかけるのはどうかと思うよ。分からないのかい?ロザリーが嫌がっているのを」


「姉さんが僕を拒絶するはず無いだろう?だって僕と姉さんはずっと一緒に育ったんだから。それよりも僕の姉さんから離れろよ」


ダミアンは今まで見たことが無いような険しい顔でルペルト様を睨んでいる。


「一体…何がどうなってるんだ?」


一方、訳が分からない様子のイアソン王子は戸惑った様子で立っている。


「駄目だよ。僕が手を放したら君はロザリーを奪うつもりだろう?そうはさせないよ」


ルペルト様は相変わらず涼し気な顔でダミアンを見ている。


「奪うだって?いや!違うっ!僕は姉さんを助ける為にこの学園にやって来たんだ!姉さんを連れて逃げる為にっ!」


まさか、ダミアンはユーグ様の事を口にするつもりなのだろうか?


いや…ルペルト様にだけは…ユーグ様のことを知られたくない…っ!


「やめてダミアンッ!」


「姉さんは…学園を卒業後、結婚させられるんだよっ!だから僕は姉さんを助けようとしてるんだっ!」


しかし、ダミアンは口にしてしまった――。

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