11-13 お別れの手紙

 誰もいない静まり返った寮の自室へ戻ると、早速部屋の明かりを灯すとデスクの前の椅子に座った。

肩から下げていたショルダーバッグからフランシスカ様の手紙を取り出すと早速、開封して読み始めた―。



****


  ロザリーへ


 突然私とレナートが学園を辞めることになって、さぞかし驚いたことでしょうね?

この学園に入学した当初は卒業までは通うものだとばかり思っていたし、貴女という初めてのお友達が出来た矢先にこんなことになるとは夢にも思わなかったわ。


 ロザリー。

 

 私、貴女に謝らなければならないことがあるの。レナートは随分貴女に酷いことをしてきたみたいね。


イアソン王子とロザリーの仲を勝手に疑って、貴女のことを私の幸せを奪う存在だと勘違いして、散々傷つけてしまったと聞かされたわ。

自分がこんな目に遭ったのは、きっと罰が当たったからに違いないって。


本当は貴女に謝罪の手紙を書きたいのに、まだ片目に慣れなくて今回は手紙を書けなくて申し訳ないとレナートは反省しているわ。でもいずれは必ず貴女に謝罪の手紙を書くので、その時はどうか受け取って貰いたいそうよ。



 ロザリー、レナートは変わったわ。


左目を失明したとき、私は自分のせいでレナートの目から光を奪ってしまったと思うと同時に、もう彼からは逃げられないと絶望してしまったの。

こんなことを考えるなんて最低でしょう?自分でもそう思うもの。



けれど、レナートは自分から私に言ったの。


「婚約を解消しよう」って。


元々婚約を望んでいない私を無理に追い回し、ロザリーを酷く傷つけた挙句に左目を失明して、初めて自分が愚かだったか気づいたのですって。

 

 今まで怖がらせてごめんと謝ってきたの。

もう自分から解放してあげるから、どうか幸せになってほしいと言われたわ。


その言葉を聞かされた時、私は絶対にレナートから離れてはいけないと思ったわ。

だから彼と婚約関係を続けることに決めたわ。

勿論両親からは、折角公爵家と婚約解消することが出来たのにと残念がられてしまったけれど、私は彼の傍にいることにしたの。


 私とレナートは18歳になったら結婚します。


私たちの結婚式には是非、ロザリーにも出席してもらいたいわ。


短い間でしたが、貴女にお会いすることが出来て光栄でした。



出来る事ならイアソン王子のことをどうか宜しくお願いします。

『ルクソール』王国の姫、ロザリー様。




*****



フランシスカ様…。


私は手紙を胸に抱きしめた。


そう、もともとレナート様とフランシスカ様は婚約者同士。

私の心の中ではまだモヤモヤした気持ちがあるけれども…。


「でも、これで…多分良かったのよね…?だって元々レナート様とフランシスカ様は婚約しているのだから…」


自分に言い聞かせ、再度フランシスカ様からのお手紙を読んだ。


それにしても最後の文章…。


「『ルクソール』王国の姫…?それにイアソン王子のことを宜しくって…一体…何の事なの…?」



私がフランシスカ様の手紙の本当の意味を知るには…もうすこし先のことになる―。

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