11-3 ルームメイトからの誘い
結局、私達学生は新学期早々登校してすぐに休校で帰宅ということになってしまった。
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「それにしてもどうなってしまうのかしら…。レナート様の左目を失明させてしまった3年生は…」
寮へ戻る最中、アニータがため息をついた。
「分からないわ…。でもレナート様は公爵家の方…そして相手の3年生は伯爵家…身分の差がはっきりしているのだもの。…きっとただではすまないはずだわ…」
「そうね。良くて退学。最悪の場合…伯爵家の爵位を失うかもしれないわね」
アニータの言葉は事実だろう。でも、まだたった16歳の少年の左目から永遠に光を奪ってしまったのだから当然だろう。
「レナート様は…今どうしているのかしら…」
「さぁ…でも私達平民がレナート様の病状を知る良しも無いわよ」
アニータ肩をすくめた。
「そう言えばイアソン王子はどうしたのかしら?」
ひょっとすると…レナート様の病室についている…?
「イアソン王子はいつも通り、学園を休んだんじゃ無いかしら?あまり新学期初日からいたことが無い方だもの」
「え?そうなの?」
それは少し驚きだった。
「ええ、そうよ。きっと今回も休んだんじゃ無いかしら?」
「そう…」
アニータの話をぼんやり聞きながら、イアソン王子のことを考えた。
ひょっとすると今頃イアソン王子はレナート様の件で…理事長と話をしているのではないだろうか…と。
「あ、そう言えばロザリー。また1周間休校になるでしょう?だからまた今日から実家に戻ることにしたわ。ほら…学園に残っていると新聞社が取材に来るかも知れないから実家に戻れる人は戻ったほうが良いって言われているでしょう?」
「そうね。分かったわ。うん…戻れるなら戻ったほうがいいわよ」
「…やっぱりロザリーは…実家に戻らないの?」
「ええ。とても遠いから…あまり帰りたくないのよ」
私は曖昧に返事をした。
アニータはひょっとすると私には何らかの事情があるに違いないと思っているようだが、特に何も聞いてこない。
きっと私に気を使ってくれているのだろう。
「そう、それじゃまた1人になってしまうのね?あの…ね。もしロザリーさえ、良ければ…一緒に私の家に遊びに来る?」
「アニータ…」
アニータの誘いはとても嬉しかったけれども、学園に残れば何かしらレナート様に関する情報を得ることが出来るかも知れない。
「いいえ、大丈夫よ。ありがとう、誘ってくれて」
私は笑みを浮かべてアニータにお礼を言った。
結局、この日の内に平民学生は私を除いて全員が実家へ帰ってしまった。
そして、その夜…イアソン王子が私を尋ねてきた―。
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