5-2 私の事情
「おはようございます」
花屋に到着するとカトリーヌさんがすぐに店先から顔を出して来た。
「まぁ!ロザリー。仕事に出て来て大丈夫だったの?」
「はい。どうもご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。
頭を下げるとカトリーヌさんが頭を撫でて来た。
「何言ってるのよ。迷惑なんて掛けたと思わないで。それよりも今日は仕事に出て来て大丈夫だったの?」
「もう平気です。なので今日からまたよろしくお願いします」
「そう?こちらこそよろしくね。それじゃ早速お仕事お願いできるかしら?」
「はい!」
私は元気よく返事をした―。
****
「ふんふ~ん…」
鼻歌を歌いながら、店先に並べられた鉢植えのお花にじょうろでお水を上げていた時の事だった。
「随分上機嫌だな」
突然背後から声を掛けられて、慌て振り向いた。
「え?!」
するとそこにはイアソン王子とフランシスカ様が立っていたのだ。
「あ…!こ、こんにちはっ!イアソン王子。そしてフランシスカ様」
「良かった…。すっかり元気になったみたいね。ずっと心配していたのよ?」
フランシスカ様がじっと私を見つめて来る。
「フランシスカ様…何故…?」
何故、ここに…?
そこから先の言葉は言えなかった。私はもうフランシスカ様ともイアソン王子とも距離を置こうと決めて、伝言をお願いしたのだから。
「ロザリー」
フランシスカ様が私を呼ぶ。
「は、はい…」
「ごめんなさい」
突然フランシスカ様が私に頭を下げて来た。
「え?な、何故謝るのですか?」
「それは…私のせいでレナートが貴女に酷い言葉と態度を取ったから…謝りたかったのよ」
「そ、そんな。フランシスカ様は何も悪くありません。だから謝る必要は…」
しかし、フランシスカ様は首を振る。
「いいえ、私のせいなのよ。レナートがあんな風になってしまったのは…。彼の代わりに謝らせて。本当にごめんなさい。それと…私はロザリーから距離を置くつもりは無いから」
「え…?」
「フランシスカはレナートにはっきり言ったんだよ。ロザリーは自分にとって大切な存在だから傷つけたりする事は絶対に許さないって。そうしたら…レナートは頷いたよ。『分った』と言って…」
イアソン王子が教えてくれた。
「そう…なのですか?」
「ええ、もう大丈夫よ。これでレナートはもう貴女を傷つけような事はしないと思うわ。だから…この学園を辞めようとは思わないで欲しいの」
そしてフランシスカ様は私の手を取り、握りしめて来た。
「フランシスカ様…」
「毎年この学園は…途中で退学していく学生が多いんだ。得に平民学生がね。だから俺は入学式でこれから卒業までの3年間、1人も欠ける事無く全員揃って無事に卒業しようと言ったのさ」
私はフランシスカ様とイアソン王子を見ると言った。
「大丈夫です。私はこの学園を辞めませんから」
2人に言う。
だって…私にはやめたくても、どうしてもやめられない深い理由があるのだから―。
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