3−14 制服を受け取る理由

「退学ですか?!ほ、本当に退学にしてしまったのですかっ?!」


そ、そんな…。私のせいで…?


するとイアソン王子はニコリと笑みを浮かべると言った。


「ロザリー、ひょっとして何か勘違いしているのかな?正確に言えば退学にした…と言うよりは、退学せざるを得なかったんだよ。彼女たちは」


「え?そ、それは一体どういう意味なのでしょうか…?」


「この学園はね、学費がとても高いのは知ってるよね?」


「はい、勿論です」


尤も…私は学費をあの方に支払って貰っているけれども。


「ロザリーを標的にした女子学生たちは皆下級貴族だっただろう?」


「そうですね…」


「大体の下級貴族の学生たちは、ただ爵位があるってだけで実際はとても貧しい生活を強いられている暮らしをしている場合が多いんだよ」


「…それは…知っています」


実際は平民学生たちの方が裕福な暮らしをしていることも既に聞かされていた事だった。


「実は彼女たちは既に学費を滞納している生徒たちばかりだったんだ」


「え?!」


「理事長も困り果てていてね…中々説得しても、もう少し支払いを待ってくれと頼み込まれていたんだ。一応彼らも貴族だから蔑ろに出来ないし…。何か適当な理由をつけて退学させたいと思っていたらしいんだよ」


「そ、そうだったのですか…?」


優しい笑みを浮かべながらも、淡々と語るイアソン王子が何だか怖くなってきた。


「そこで、今回ロザリーをよってたかって虐める事件が勃発した」


「そんな…大体事件と呼べるほどの大事ではありませんよ?」


「だけど、現に君は制服を傷つけられただけでなく、怪我までさせられた」


「それはそうですけど…いくら何でも大袈裟すぎです」


うつむきながら返事をする。


「大袈裟なものかな?僕はね、前から貴族学生たちが君たち平民学生に取る態度が許せなかったんだよ。今回は見せしめにするのに丁度良い機会だったんだ。ありがとう、君には感謝しているよ。だからこの制服はお礼だと思って受け取ってほしいんだ」


イアソン王子は笑みを浮かべて私を見ている。けれど、私はどうしても自分が王子に利用されたとしか思えなかった。


「…受け取れません…」


私は小さく言う。


「何故?君はこれから3年間…その破れた制服を着続けるつもり?」


「私…今週から週末だけですけどアルバイトを始めるんです。働いて、貯めたお金で…いつか制服を買います。折角の申し出ですけど…受け取れません」


「…ロザリー…言っておくけど、ここが貴族たちもいる学園だってことは自覚しているよね?」


「え?勿論です」


イアソン王子は腕組みすると言った。


「そんな風に薄汚れて、繕った後がある制服を着ていると…他の学生たちに言われるよ?『学園の品位を落とすな』って」


「!」


「恐らく、他の学生たちから制服を新調するように圧力を掛けられるんじゃないかな?」


「そ、それは…」


でも、確かにイアソン王子の言うとおりかもしれない。


「分かっただろう?これは僕が出したお金じゃないんだ。君を虐めた彼女たちからの慰謝料なんだよ?素直に受け取ったほうがいいと思うけど?この学園にいたいんだろう?」


「!」


その言葉が私の心を動かした。


「わ、分かりました…。ありがたく…頂きます…」


私は制服が入った紙袋を抱きしめた―。


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