3−8 尋ねたいこと
何と言っても相手はイアソン王子。この学園で彼ほど身分の高い者は存在しない。そんな彼に睨みつけられればたまったものではないのだろう。その場にいた全員がしんと静まり返っている。
「ロザリー…怪我させられたっていうのは一体誰に…」
レナート様が心配そうな目で私に尋ねてきた。
「…」
私はその言葉に答えず、俯く。いや、答えたくても答えられなかった。何故なら相手は学年すら分からない下級貴族の学生達なのだから。
「ロザリー…」
再度、レナート様が尋ねてきた時…。
キーンコーンカーンコーン…
タイミングよくチャイムが鳴り響き、私はその場を切り抜けられることが出来た。
レナート王子はため息をついて、定着した自分の席に着席し、イアソン王子も席に着いた。
「良かったわね。ロザリー」
そっとアニータが声を掛けてきた。
「ええ…良かったわ。本当に…」
返事をしながら思った。
こんなに周りから注目されるようになっては、もう不用意にレナート様に近付いたり、イアソン王子には極力近づかないように注意しなくては…と。
****
昼休み―
私はアニータやアリエル、サリーと一緒にカフェテリアでランチを食べていた。
「今日のAランチのサンドイッチは美味しいわね」
アリエルが笑顔で言う。
「そうね、私はこのチキンサンドが好きだわ」
アニータの言葉にサリーが賛同する。
「そうね、私もこのチキンサンド好きだわ」
等々…。
そんな3人の会話を聞きながら、食事をしているとフランシスカ様が3人の友人達と一緒にカフェテリアに現れた。
「あら、フランシスカ様だわ」
「珍しいわね。カフェテリアに食事にいらっしゃるなんて」
アリエルとアニータの会話に私も加わった。どうしても聞きたい事があったからだ。
「あのね、少し教えて貰いたいのだけれど…」
「何かしら?」
アニータが返事をした。
「フランシスカ様がカフェテリアにいらっしゃるのって…珍しいことなの?」
「あら、そうよ?知らなかったの?侯爵家以上の貴族専用のレストランがあるのよ。大抵は高位貴族の方たちはそっちへ行くのよ」
「そうだったの…知らなかったわ…」
「ひょっとして会いたくない方でもいたのかしら?」
サリーが意味深な言い方をする。
「会いたくない方って…?」
尋ねるとアリエルが答えた。
「そんな事決まってるじゃない、レナート様よ」
「!」
その言葉に私は思わず反応する。
「そうね、きっと間違いないわ。だってレナート様とフランシスカ様が学園内で一緒にいる姿…殆ど見かけたことが無いもの」
「やっぱりフランシスカ様がレナート様を徹底的に避けているって話だものね」
「なんでもクラスも絶対一緒にしないで欲しいとフランシスカ様が訴えているって話よ」
アリエル、サリー、アニータが交互に話すのを私は黙って聞いていた。でも…それが本当ならレナート様がお気の毒でたまらない。
『彼の正義感が強すぎたばかりに、ちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまって…私も巻き添えになってしまったのよ』
フランシスカ様が私に言ったその言葉が忘れられない。…子供の頃は互いに好きあっていたはずなのに…。一体どんなトラブルが起きてしまったのだろう?フランシスカ様は話してくれなかったが、レナート様に尋ねれば教えてくれるかもしれない。そのトラブルの原因が分かれば、ひょっとするとフランシスカ様はまたレナート様の事を好きになるのでは無いだろうか?
今度…機会があればレナート様に尋ねてみよう…。
友人たちの話を聞きながら、私は思った―。
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