第41話 またもトラブル

ナユタさんを無事に助けることができた俺は帰り道のスーパーに寄っていた

雫姉がカレーと言っていたからカレーの材料を買いその帰り道のことだ

後ろから女性の叫ぶ声が聞こえて来た

「その人を止めて下さい!」

こちらに黒の毛糸の帽子を被りマスクをする人が女性用のバッグを抱えて走ってくる

周囲の人々は関わらない様に物陰に隠れている

まさか、この女装がトラブルを招いているんではないだろうか

困ってる人は放っておけないよな…

亡くなった両親にもいつも困ってる人がいたら力になってあげてと言われてきた

やれることはやろう

男が近づいてくると俺に向かって叫ぶ

「そこをどけ!」

正直なところ今すぐ逃げたいよ

幸い男は凶器を持っていない

男は俺を退かすため勢い任せで殴りかかってくる

俺はその勢いを利用して腕と胸ぐらを掴み、背負い投げ!

「ぐはっ」

見事成功し男は体を地面に打ち付けて気を失った

その瞬間、それを見ていた人達が物陰から出て来て俺に向けて拍手をしてきた

「あんたお手柄じゃない!」

近くにいたおばさんが俺の肩を叩きながら言う

俺は一応微笑んでおく

「いつまで女の子に盗人の男を掴ませてるんだい、男が代わるんだよ!」

おばさんのお陰で周辺にいた他の人が男の監視を変わってくれた

俺は男が抱えていたバッグを取ると持ち主のサングラスと帽子の女性が駆け寄って来て、目の前にくるとサングラスを外した

「ありがとうございます!このバッグは大切な友達から貰ったものでなんとお礼を言ったらいいか…」

聞き覚えのある様な声だが気のせいだろう

気にしないでくれと手を振る

「通報を受けて来ました!」

見覚えのある2人組の警察官が来た

「お巡りさん、犯人はこの男でこの子が捕まえてくれたの!」

おばさんによって警察の前に出されてしまう

「あれ、君 どこかで…」

俺を見て男の警察官が少し考え込む

「先輩、裏道の連続痴漢事件の犯人を捕まえた時にいた女の子ですよ」

連続痴漢事件!?

思ってたより恐ろしいおじさんだったのかナユタさんを助けられて良かった

「そうか君が!是非とも感謝状を、送らせてほしい!」

まじで要らん!

両手を懸命に振り拒否する

「君みたいな正義感溢れる若者がいればこの町も安泰だ! 是非名前を聞かせてくれないかい?」

まずいどうすれば…

「お巡りさん!犯人が目を覚ましました!」

盗人を取り押さえてた男性が叫ぶ

ナイス盗人良いタイミングで起きてくれてありがとう

みんなの視線が盗人に向く

今しかない

俺は買い物袋を拾い駆け出す

「待って下さい!お礼を!」

女性が叫び声が聞こえるが俺は止まることなく走り続けた

家に着くと何故か涙が出てきた

「ただいま我が家…」

雫姉が帰るまでゆっくりと過ごすのだった

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