削葬式

@Y_words

通夜

 世の中の何割の人間が、油絵を描いたことがあるのだろう。

 例えば、一般的な高校のクラス。こっそりと描いている者を含めて、絵を描ける人間は、多く見積もって2割ほどか。その2割が集まった部活が美術部だとして、皆が油絵を経験する訳では無い。アニメやイラストが普及した今、古典的な名称を流用して「美術部」と称しながらも、その現状が「アニメーション同好会」である事は少なく無い。(もちろん、アニメーション同好会は独特の素晴らしさがあるので、否定している訳ではないが。)色々説明を省くが、油絵を描けるのはどうせその美術部の2割程ではないだろうか。

 雑な計算だが、一般的な高校で、油絵を描ける人間は全体の約4パーセントということになる。一般的な高校に通えている人間の割合は、現実的にもっと少ないので、この国で油絵を描いている人はもっと少ないのだろう。世界規模に広げたら、もっともっと少ないのだろう。

 油絵を描く人間は孤独だ。どれほど完成した作品が雄弁でも、油絵を描く人の輪はこれほどまでに小さい。理解者を見つける事は難しい。

 しかし、だからこそ、誰にも気づかれずに色々な秘密を絵画に仕込むことができる。油絵の知識が深くなければ、思いつかないかもしれない仕掛けを。そしてもし、そこまで読み当てられる人とならば共有したい暗号を。

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