第37話 元パーティ、ロンドロイドにて
ゲイツたちは仕事を失敗し、逃げるようにロンドロイドへとやって来ていた。
元いた町にはとてもじゃないが戻れない。
まさかSランクパーティの自分たちが程度の低いモンスターにまけるだなんて……
そんなことがバレたらどうなることか。
考えるだけで背筋が冷える。
「で、これからどうすんだよ」
「どうするって……ここを拠点とするしかないんじゃないか。ツヴァイダールには戻れないし……」
一斉にため息をつく四人。
「なんでこんなことになっちゃったのかしら……私たち、強かったはずよね」
「強かった……でも弱くなった? いや、違う……何かを失ったんだ」
「失ったもの……メリッサとフェイト……俺らが弱くなった原因といや……【能力強化ポーション】か?」
「…………」
それしか考えられない。
これまでフェイトのポーションに頼ってきていた四人。
今になってようやくそのありがたみを噛みしめだす。
だがもうすでに時は遅し。
彼らの仲間だったフェイトはここにはもういない。
「あいつが必要なら連れ戻せばいいじゃない。で、また使ってやったらいいでしょ?」
「連れ戻すって……あいつはダンジョンに置き去りにしてきたんだぞ」
「奇跡的に生き延びてる可能性は?」
「可能性はそりゃ0ではないけど、でもあいつ、方向音痴だし」
「迷って出てこれない可能性の方がたけえってか……ああ、くそ! あいつはどうやってポーションを用意してたんだよ!」
「それだけ教えてくれたらいいんだけどねぇ……でも死んじゃったんじゃ仕方ないか」
クィーンはフェイトの生死など、虫が死んだかどうかぐらいどうでもいいと考えていた。
しかし自分たちにはポーションが必要。
フェイトは必要ないと考えるが、その代わりは必要だと理解している。
「それで、ここで仕事をこなしていくとして……どうやってアイテムを手に入れる? どうやって俺たちは元の強さに戻る?」
「……金だな。金で全てを解決するしかねえ」
「でも私たちが必要としているアイテムはバカ高いんでしょ? 金で解決って、目が飛び出るぐらいの金持ちじゃないと無理でしょうよ」
「なら、地道に適当な仕事をして生活していくか?」
「そんなのごめんよ! 私はクィーンよ? 今更惨めな生活なんてできるわけないわ」
女王気質のクィーンに嫌気が差す三人。
そしてこれからのことを考え、ゲイツは肩を落としてため息をついた。
「……あ」
「? どうしたんだよ?」
突然固まるゲイツにヒューバロンが怪訝そうな顔をする。
そしてゲイツの視線の先を確認してみると――なんとそこにはメリッサの姿があるではないか。
「メリッサ!?」
ヒューバロンとシャイザーは大量の冷や汗をかき、ゲイツは胸を高鳴らせ、クィーンは舌打ちをする。
メリッサはパーティを脱退した後、フェイトが取り残された
ダンジョンへ向かおうとしていた。
しかし、ダンジョンが消滅したと聞き意気消沈。
何も考えず落ち込んだまま、この町に流れ着いたところであった。
「これからどうしよっかな……」
フェイトがいた頃は楽しかった。
他のメンバーと違い、自分の役割をよく理解しよく働く男。
何か力を隠している様子ではあったが……それを見せびらかせばゲイツたちは自信を失い、パーティに亀裂が走っていただろう。
フェイトにはフェイトなりに考えがあったんだろうとメリッサは考えていた。
だが皮肉なもので、フェイトがいなくなったことによりパーティに亀裂が走り、現在はどん底まで落ちようとしている。
どちらにしてもフェイトがキーマンだったのだ。
メリッサはそんなフェイトのことを想い、そして死を受け入れようとしていた。
悲しいけど、いつまで落ち込んでるのも私らしくないわ。
失ったものはもう取り戻せないけれど、この気持ちはどうしようもないけれど、私はこれからも生きて行かなければいけないのだ。
今日を生きなければいけないんだ。
と、そこで建物が粉々になった跡に大勢の人が集まり、憎しみに満ちた目で瓦礫を撤去している姿が目に入る。
「何かあったの?」
「ああ……この間、宿を爆破されてな」
「宿を破壊? 目的は?」
「そんなの知るかよ! こっちが聞きたいぐらいだ。ったく、とんだ災難だぜ」
メリッサは考える。
手始めに、この件を解決するところから始めようか。
これも何かの縁かも知れない。
そうと決まれば彼女の行動は早い。
「私が犯人を捜して来てやる。そいつらはどこに行った?」
「噂によると、北のヴァイアントに逃げて行ったって話だぜ。男と女の三人組だってよ」
「男と女の三人組か……分かった。数日待ってて。私がそいつらをひっ捕らえてここまで引きずってでも連れてくるから」
「あ、ああ……期待しないで待ってるよ」
「期待して待ってなさいよ」
女一人に何ができるのだと男は呆れ顔。
だが彼は知らない。
彼女はSランクパーティをけん引していた強者だということを。
しかしそんな男の考えなどどうでもいいと考えるメリッサ。
悪い奴がいるならぶっ飛ばす。
今はそれだけでいい。
そうしていれば、気が紛れるし人のためになるから。
そしてメリッサは北に向かって歩き始める。
「ど、どうする……」
「どうするって……追いかけるに決まってんでしょ」
「はぁ!?」
クィーンの言い出したことに仰天するヒューバロンとシャイザー。
だがゲイツだけは違った。
怖いと思う気持ちもあるが、彼女を追いかけたいという気持ちも少なからずあったのだ。
メリッサともう一度パーティを組みたい……
純粋にそう思うゲイツはクィーンに返事をする。
「つけて行くとしよう。目的地は分からないが、ついて行った方が楽しそうだしな」
「ええ……それで隙を見せた瞬間に……ね」
「…………」
クィーンがメリッサに手を出すその時、自分が彼女を助けたらどうなるか……
ゲイツはその時のことを想像しニヤリと笑う。
かくして、メリッサとゲイツたちは目的は別々ではあるが、ヴァイアントに向かうのであった。
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