君は変わったよ

綿麻きぬ

変化

 君は変わってしまったね。



 目覚まし時計を止めて、スマホを見る。メッセージの通知はきている。ほんのり浮かれる心を押し込めてアプリを開く。ただ、そこには君からのメッセージはきていない。


 今日もこなかった、いつものようにこないメッセージに慣れてしまった。いつからだろうか、この確認作業が日常になってしまったのは。もう遠い記憶だ。


 もっと遠い記憶では私も君も笑っていた。この幸せが永遠に続くものだと思っていた。


 だけど、どこからかすれ違っていった。元からすれ違っていっていたのかもしれない。すれ違いには気づいていた。何か違和感があった、でも大丈夫だと思い込んでいた。思い込んだ果てにはただの執着が残った。


 君から別れを切り出されたときには終わっていたのだろう。気づかずに浮かれていた私が間抜けなだけだ。


 ただ、私は物分かりの言い人間ではない。君に固執してまだ縋りついている。縋りついているのを君は滑稽と思っていて欲しい。


 君はそんな私の相手をなんやかんやでしてくれている。それは昔好きだった相手に対する情なのか、憐れみなのか… 私には分からないが、それを支えとしてしまっている。いつかいきなり消えると分かっている脆い感情を軸に私は生きながらえている。


 そんな私はどん底にいるのに、君は楽しそうだ。


 私としか行かなかったカラオケに君は同級生や後輩と行く。

 私しか入らせなかった家に友達を呼ぶ。

 私しか触れていなかったぬいぐるみを他の人間に触らせる。

 外に行くのが好きではなかった君は積極的に外へ行く。

 SNSには君の写真が載っている。


 君は私への感情がなくなってサッパリしたかい。人生が豊かになったかい? その行動は私を忘れるためなのか、それとも元からの行動を私が制限してしまっていたのか、はたまたなんも関係ないのか。


 それをしている君は幸せそうだ、私だけの君はいなくなっていくのが分かっていく。私しか知らなかった君はどんどん消えていく。もう残ってないかもしれない。でも記憶の隅にあるこのよく分からない感情で残っていると暗示をかけて私は君を好きなままでいるのだろう。


 私は君にとっての何者なのだろう、君にとって私は何者なのだろうか。きっと何者でもなくなっていくのだろう。


 いつになったらこの呪縛は解けるのだろうか。永遠に解けないで欲しくもあり、今すぐ解けて欲しい気もする。


 君から始まったこの恋を、君から終わらせようとしたこの恋を、私が終わらせられる日は来るのだろうか。私には分からない。


 この恋の最後に二人とも笑顔になれることを私は祈っている。

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君は変わったよ 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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