廃墟の守り神

月影澪央

第1話 十三人の子供たち

 誰も住まなくなり、寂れた街。


 そこに、少し大きな屋敷のようなものが建っていた。


 外観は街の風景と変わらず、灰色の壁に黒い屋根の建物。


 ただ、一つだけ、他と違うところがあった。


 それは、ここにだけ人が住んでいるということだった。


 ここには、十三人の子供たちが幸せに暮らしていた。


 屋敷には大きな庭があり、そこで子供たちは遊んでいた。


 そして、その様子を見つめる一人の少年がいた。


 彼は色白で、今にも死にそうなほど、げっそりしていた。

 色白に見えるのは黒髪のおかげもあるのだろう。だが、今にも消えてしまいそうなほど弱っているように見える。


「俺……何で生きてるんだろ」


 彼は窓の外を眺めたまま、そう呟いた。


「またその話?」


 部屋の扉が開き、そこから少女が入ってきて、彼にそう話しかけた。


「まともに走れもしない。こんな、何もないところから出られない。俺のこんな世界、メイにはわかんないだろ」


 彼は少女にそう返した。


 少女の名前は、メイ。彼が唯一、話をする子供だった。


「確かにわかんないよ? でも、何でそんな考えになるの?」


 メイはそう聞き返す。


「生きる意味がないから」


 彼はそう即答する。


「いつかは死ぬわけだし。この心臓は、死までのタイムリミットを刻んでいるだけ」


 彼はそう続けた。


「何でそうなるかなー。いっつもそう。そう簡単に死ぬんだったら、ヨツバはとっくに死んでるよ」


 メイは呆れたようにそう言って、部屋を出ていった。



 古い扉の閉まる音が、部屋に響いた。



「メイにはわからない。俺の気持ちなんて……さ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る