【File49】是枝の家
【00】9月21日Twitter Spaceにて
※現実の時間軸ではTwitter Spaceは、作中時間における現在の次の年にサービス開催となりますが、ご都合により2020年からあったということでお願いいたします
そういえば、おかしな事があって聞いて欲しいんだけど。割りとガチで怖いっていうか、ちょっと、意味がわからないっていうか……。
……いや、どうだろう。心霊系とはちょっと違うかもしれない。解んない。
まあ、けっこうヤバい話だから、細かいとこは、ぼかしぼかし話していこうと思うんだけど、先週末に変なDM来たのね。捨てアカっぽいのから。
『七年前に
『は?』って、返したよね。だって、そんなん心当たりないし、ぜんぜん意味不明だから『悪戯か何かですか?』って尋ねたらさ、めちゃくちゃ早いレスポンスで返事が来たの。
『もしかして、捨てたんじゃねえよな!? もしそうなら、てめえ、呪い殺してやる! 冗談や脅しじゃねえからな!』って。
俺、怖くなって、ブロックして……でも、すぐに別の捨てアカっぽいのから『逃げるな』って。流石に怖くなって『警察に通報するぞ』って返したの。
そしたら、向こうが勝手にびびって、アカ消して逃亡。
そこで、俺思い出したんだ。
高校生の頃さ、俺、仲間と近所にあった空き家に忍び込んだ事があってさ。
その空き家は、俺がもっと小さい頃は、変な気持ちの悪いおっさんが住んでたんだけど、いつの間にか姿を見なくなってて、家にも人の住んでる様子がなくて、ずっと放置されてたの。
で、どういう流れだったか忘れたけど、仲間の一人が探検してみないかって。
うん、そう。バカだよね。まあ犯罪だよ。
でも、ガキだったから悪ノリしちゃって。確か夏休みだったと思うけど、真っ昼間に忍び込んだの。玄関から。鍵は壊した。
それでさ、家の中にはけっこうたくさんの物が残ってて。
何か……ちょっと、いや、かなり不気味だった。
というのも、棚の中に入ってた皿とかコップとかが床に転がってたり、椅子とか小さな棚とかそういうのが横に倒れてたり、ハンガーに掛かっていたと思われる洗濯物が床に落ちてたり、何か地震が来た後みたいな感じで、けっこう荒れててさ。
でも、特にこれといって変わったものもなくてさ。仲間たちも飽きてきて……あ? 人数? 三人だよ。俺も含めて。
で、いちばん奥の寝室みたいな部屋に着いたのね。その部屋の押し入れの中に段ボールがあって、そこに写真とかいろいろと入ってたのね。
写真に写ってたのは、古いファッションの若い男女で……七十年代くらい? タンパロン? パンタロンだっけ? あの裾が広いズボン。髪も長く伸ばしてて、そんな感じの。前にこの家に住んでたおっさんの青春時代とかだったのかな、なんて思ったりしてさ。
それで、その段ボールの中に小さな鍵の掛かった箱があって。大きさは、そうだなー……小さめの弁当箱くらい?
で、けっこう、綺麗な飾りがついててさ、宝箱みたいな感じだったの。
仲間の一人が『何か金目の物が入ってるかも』とか言って、その宝箱を投げつけたり、踏み潰したりして開けようとしたの。
それで、その箱の蓋が開いたんだけど、中にはお守りが一つだけ入ってて……神社とかで売ってる普通のやつ。交通安全の。
ただ、触った感触が何かおかしくて、中を開けてみたらね、入っていたのは折り畳まれた五百円札。
でさ、ネットとかで高く売れるんじゃねって仲間と盛りあがって持って帰ったの。
けっきょく、調べてみたら五百円札ってエラープリントとかそういうのじゃないと、ほとんど価値は変わらないみたいなんだ。
普通に今でも使えるみたいだし、コンビニで何か買うかって話になったんだけど、仲間の一人が『もう少し時間が経てばプレミアついて値段があがるかも』って。
で、しばらく寝かせようって事になって、そのまんま忘れてたのね。
それでDMの“盗んだもの”って、あのお守りの事だって思い出して。
ああ。俺、法律の事とか良く知らんけど、調べてみたら窃盗の時効って七年だからもう大丈夫なんだけどさ。そう。じゃなかったら、ここで喋ってないって。あはははは。
で、あの捨てアカの主は『盗んだものを返せ』っていうぐらいだから、あの家に昔住んでた不気味なおっさんって事だろ。知らんけど。
それにしたって、どこで俺がそのお守りを持っていった事を知ったんだろうって気になってさ。
少なくとも、俺は誰にも話してないし。いや誰かに話したの忘れてるだけかもしれないけど。
とりあえず、あのとき、一緒にあの家に忍び込んだ仲間二人に連絡取って聞いてみたの。お守りの事、誰かに喋ったのかって。
そうしたら、二人とも知らないって。そんなの今思い出したなんて言われて……。
一応、二人にも事情を話してさ。そしたら冗談でも言ってるのかって。どっちも半信半疑って感じのリアクションだったわ。
その日は、とりあえずそれで終わった。
それで、その次の日さ、仕事行ってアパート帰って来たら、鍵が開いてて……『あれ、俺、鍵閉め忘れたっけ』とか思ったんだけど、鍵がぶっ壊されてたの。
慌てて家の中に入ったら、めちゃくちゃ荒らされてて。
んで、リビングの壁に赤黒い文字で『返せ!』って。たぶん、血だと思う。人間のものかどうかは解らないけど。いや、たぶん違うんじゃないかな、流石に……。
まあ、でも幸い通帳とかは無事だった。
で、怖くなって警察に連絡しようと思ったんだけど、このときはまだ時効とかそういうのに頭回らなくて、今回の件を一から説明すると窃盗罪で俺も捕まるんじゃないかって……。
でも、このままにしておけないし、どうしようかって思って……悩んだ末にけっきょく、あのお守りを返そうって思ったの。まだ実家にあるはずだから。
んで、次の日、夜勤の前に実家帰って自分の部屋を漁って、どうにか、あのお守りを見つけたのね。
で、そこで考えてみれば、お守りを返そうにもさ、向こうと連絡を取る手段が俺にはない訳よ。
冷静に考えてみれば、もう一度向こうから連絡が来るのを待っていれば良かったんだけど、なんか、とっとと終わらせたいっていうか……その、お守りを手元に置いておきたくないっていうか……。
んで、あの家に返しに行く事にしたのね。実家から徒歩五分くらいだったからさ。
ほんで、久々にあの家に行ったんだけど、相変わらず人の気配とかぜんぜんなくてさ。庭とかも雑草がめちゃくちゃ凄くて、玄関の扉も鍵が壊れたままだったよ。
呼び鈴も電源が入ってないみたいで、仕方ないから玄関を開けて『ごめんくださーい』って呼び掛けて。
でも、やっぱ、反応なくて。
それで玄関口で途方に暮れてるとさ、門の方から変な二人組がやって来てさ。
あー、どっちも女の子。
背が高い髪の長い子と、背が低くて髪を後ろで縛った子。どっちもハイカーっぽい格好で、かなり可愛かったんだけどさ。
で、その女の子たち、何て言うか……顔つきとか表情が凄い自然だったんだよね。何か自分の家に帰ってきたところって感じで。玄関前の俺を見て、ちょっとびっくりしてる感じで。
『どちら様ですか?』って訊いてきたから、俺、『〇〇さんですか?』って訊き返したの。〇〇さんっていうのは、その家の表札にあった苗字ね。
そしたら、背の高い子が『ええ。貴方は?』って。その言い方も自然で、やっぱり、ここの家の子なんだって。家の荒れ具合は引っ掛かったけど、この家に住んでるんだって思って。
たぶん、昔、この家に住んでたおっさんの孫とかなのかなと思ったの。
『この度はすいませんでしたって、お爺さんに言ってください。それから、これはお借りしていたものです。お爺さんに渡していただけますか?』って言ったのよ。それで、そのお守りを渡したの。
その子はちょっと不思議そうな顔をしてから『解りましたけれど、これ何ですか?』って聞くから、俺、焦って『お爺さんに聞いてください』って言って、帰ろうとしたのね。
そうしたら、呼び止められて名前を聞かれたの。
ちょっと、迷ったけど、よくよく考えてみれば、この子のお爺さんには住んでる場所知られてる訳だし、嘘吐いても意味ないなと思って本名を言ったのね。
それで、実家に帰ったの。
で、その日は実家で夕食を食べてから夜勤に行く事になって、そのとき、親にさ、何気なく、その家に住んでる人の事を聞いたの。
そうしたら親が言うには、今もあの家には誰も住んでないんだって。
じゃあ、あの二人組の女の子、いったい誰だったんだろうって。あの家に何をしにきたんだろうって。
怖いでしょ? 変でしょ?
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