第11話
何を言うべきかを探しながら語る彼女の言葉一つ一つには、彼女なりの思いの強さを感じる。
その言葉にしっかり向き合い、今思う素直な気持ちを伝えよう。
「俺は嬉しかったよ。また前橋さんと会えて。前橋さんには感謝しているんだ。今もそうだけど、亡くなる前も俺の殻を破ろうとしてくれた。あんなに女の子と話すのが苦手だったのに、前橋さんとは自然に話せたんだ。前橋さんは、他の人とは違う特別なものを感じる」
「でも、それは恋愛感情じゃない」
「さすがだね。その通りだ。前橋さんも言ってくれたけど、前橋さんと俺は似ているんだ。きっと仲良くなれる気がした。初めて女の子と親友同士になれる気がしたんだ」
フフッと微笑む彼女。耳に髪を掛けるその仕草はとても艶やかだ。
「最低ね。最低だけど、これ以上ないくらい優しい言葉だわ。普通、告白された相手に友達でもいいかなって言うのは、やんわりした断り方の代表例。たいていは友達になれっこない。でも、あなたは違うわ。心の底からそう思っているって分かる。なにせ、ずっとあなたと一緒だったのだから」
————突然、前橋さんの身体が光り出す。
周りは蒸し暑いはずなのに、その光の温かさは、とても優しくて、ずっと包まれていたいくらいだ。
「私の心残りって……これのことだったのね」
「もしかして、もう……お別れなのか」
「そうみたい。だから、最後の心残りを解決させて」
「……うん」
前橋さんのその表情は、柔らかく、どこかスッキリしている。
その瞳は、光がぐるぐると巡っていて綺麗に輝いている。
「太田直行君。私はあなたのことがこの上なく気に食わない。そんなことを思ってしまう自分も。でも、そんな風にずっと思い続けてしまうほど、死んでもなお思い続けてしまうほど、あなたは私の心の中にずっといました」
前橋さんから発せられる優しい光。
心地よい風。
長くて綺麗な髪がなびく。
そして彼女は告げた。
——————あなたのことが好きです。
その言葉とともに、教室全体が光に包まれた。
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………………
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