第12話

 それからすぐに夕飯とお風呂の準備。

 時刻は18時。


 そろそろ咲良が帰ってくる頃だ。

 咲良は高校受験を控えた受験生。

 ソフトテニス部に入っていたが、最後の大会でいいところまでいったものの全国大会までは進めず、今は引退して受験勉強に励んでいる。

 兄の俺と同じく賢明高校を目指しているため、学校帰りに図書館で勉強してから帰ってくるのがお決まりになりつつある。

そしてお風呂と夕飯を済ませてまた勉強。たまに俺も勉強を教えている。

真面目な良い子だ。

 かといって、褒めるため頭を撫でようとすると、すごい剣幕でにらまれる。

 ラブコメ特有の「頭なでなで、お顔がポッと真っ赤っか現象」は起きない。

 まぁいいんですけど?

 でも、もっと可愛くデレてくれてもいいんじゃないか?


「ただいまー」


 可愛い妹のお出ましだ。


「おかえり。ご飯にする? お風呂にする? それともオッレ?」


 親指を自分に向け軽くどや顔。


「じゃあ包丁」

「処すのか? 兄である俺を処す気なのか?」

「お兄ちゃんがキモイことを言うからでしょ。ちょっと雨に濡れちゃったし、先にお風呂入る」

「はいよ、準備はできてるからすぐ入れるぞ」

「ん、あんがと」


 これぞ、兄妹のスキンシップ。

 相手にされなくてもさほど気にしないぜ。気にしないぜ……


「あなたって妹に対していつもあんななの? 正直キモイわ」


 グサッ


 何かトゲのようなものが俺の身体を突き刺す。さすがに家族以外の人に言われるのは応える。


「いいだろ、別に」

「他の女の子に相手にされないからって、妹さんに対して痴漢を働くのはやめたほうがいいわよ」


 グサッグサッ


 今度は複数射撃で襲ってくる。


「痴漢じゃない。兄妹のほのぼのスキンシップだ」

「たしかに妹さんも、いつもの感じっぽく軽く受け流してたわね。兄妹ってこんな感じなのかしら」

「どうだろうな。どこもこんな感じじゃないか? もっと相手にしてほしい気もするが」

「そのキモイ行いを改めたら、少しは相手にしてくれるんじゃないかしら」

「あのー、さっきからキモイキモイって連発しないでくれません? 最近言われ過ぎてる気がしてそろそろライフが尽きそうだ。次回、直行死す」

「意味が分からないわ。でも、ちょっと羨ましい」

「ん? 何か言った?」

「自業自得、地獄に落ちなさいって言ったの」

「幽霊にそう言われると、本当に地獄に行っちゃいそうで怖いからやめてください。呪わないでくれ」


 そんな軽口をたたきながら、妹がお風呂から上がる前に、テーブルにおかずを並べておくことにした。

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