第32話 暗い日曜日
「――――」
目が覚めた。部屋は暗く。全員が眠っているようだった。
「――――時雨!」
「……?」
「んん、なんだ?」
先程の夢は鮮明に覚えている。あれが本当なら――時雨が危ない。
すぐに出ていこうとする八重を弦之介が制止した。
「おい!出るなって言われてただろ?」
「時雨が危ないんだ!」
「は?」
「夢に女が出てきた!アイツがなにかしようとしてる!」
「……だが出るなって」
「――5分!5分だけ出る!帰ってこなかったら助けに来てくれ!」
制止も
「あークソ!光ちゃんと石蕗さんは待機してて――」
「――いや、私が行きます」
今度は止める間もなく石蕗が走り出た。
「誰も言うこと聞かねぇじゃねぇかよ!」
「私も……」
「ダメだ。全員行って何かあったらどうする。とりあえずは……待機しとこう」
走る八重と石蕗。本堂まではそう遠くないはずだが、走っている2人は山を越えるかのように長い道と感じていた。
「時雨……無事でいてくれ――」
――その瞬間。八重は何かにつまづいて転んでしまった。
「八重君!大丈夫――――」
何かに気がついた石蕗。大声を上げて腰を抜かした。
「なんです――」
――頭。つまづいたのは頭だった。顔も知っている。
「祭松……さん……!?」
なんで。どうして。そんなことよりも――除霊が失敗した。その事実が2人にのしかかった。
「――八重君。立ってください」
「あ、ああ。ありがとうございます」
支えられながら立ち上がる。
「何をしたか知りませんが……」
「失敗したのは確実……ですね」
いよいよ夢の言葉が現実味を帯びてきた。また走り出そうとした時――前から黒い影がこちらに向かってきているのが見えた。
「「――――」」
身構える。警戒する――。
――だが走ってきたのは幽霊でもなんでもない。服を血で濡らした貴大と眠っている時雨であった。
明らかに
「大丈夫ですか!?」
「貴方たちなんでここに――まぁいいです。とにかくあの部屋へ行かなくては!!」
「あの部屋……俺らが居たところですね。分かりました。肩を貸しますから――」
ポツリと上から水滴が落ちてきた。雨漏れか。雨は強いままだがそんなわけが――。
今度は物体が落ちてきた。重みと痛み。変な感触から落ちてきた物を見る――。
「――――ぅわぁぁ!!??」
指だった。誰の指かは分からない。
指――それ以外にも内蔵、舌、目玉、腕。
「――早く行きましょう!」
「その方がいいですね……!!」
貴大と時雨を抱えながら2人は走り出した。
5分経過。八重が指定していた時間が経過したので廊下へと2人は出ていた。
電気も付いていない静かで不気味な廊下に
「探しに行くか」
「うん――」
――と、その時。奥から八重と石蕗が走ってくるのが見えた。貴大と時雨も一緒にいる。
「――おい心配しただろ!」
「んな事より早く中にもどるぞ!」
「んな事って……分かったよ――」
「――――ダメだ!!」
貴大が叫んだ。
「あぁクソっ!!ここはもうダメか……!!」
「ダメ?なんで――――」
――部屋の天井から人が落ちてきた。正確には胴体。
「……確かにヤバそうだ」
「でもどこに逃げたら!?」
「庭の方に小屋があります!そこなら結界が貼られてる!」
「結界!?……分かった行こう!!」
走る。走る。後ろから影のような黒い存在が追ってきている。第六感とかの
「あれか!?」
指を指した先には物置小屋のような建物がポツンと。今にも
「はい……!!」
「じゃあ早く――」
扉の前へ到着。八重と弦之介が協力して扉を開けようとする――が、扉は固く閉ざされたまま。成人男性2人の力でも開けるのに苦労していた。
しかし無理矢理したことによって扉はなんとか開いた。
「よし!入って――――」
――突如として指に激痛が走る八重。指を見てみる――前に気がついた。爪が剥がれていたのだ。
気が付かなかった。扉を開ける時にやってしまったのか。それとも――。
答え合わせをするかのように鼻血を出す。次に目からも血が流れる。続いて
「八重!?」
「ごふっ……何が――」
「中に入れてください!まだ間に合います!」
八重を押し込んで全員が中へと続く。弦之介が扉を閉める時――女が笑っている姿が見えた。
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