第3話
その翌日。
俺は島中の一つ星ラーメン店を巡って奔走していた。
汗もダラダラだ。決して、どうしてもラーメンを食べないと死んじゃう病にかかってるだとか、ラーメン通で毎日ブログにアップしてるからでもない。
ある人を探しているのだ。
そう、あの銀髪美少女である。
この島には有名なラーメン店が三つある。
一つは、シンプル・イズ・ベストを体現したような醤油ラーメン一筋のこの島一番の老舗店。
二つ目は、たっぷりのもやしとキャベツを乗せ、さらににんにくと背脂をこれでもかとトッピングした濃厚な豚骨ラーメンの店。
三つ目は、辛味噌ラーメンが看板メニューだが、様々な創作ラーメンを作っていることでも有名な面白い店。
そして、今まさにその三つ目のお店に到着。
道場破りのごとく勢いよく引き戸を開ける。
するとそこには……
「へい! お待ち! お姉さん外人さんかい? うちの自慢の辛味噌ラーメンをとんと味わってくれい!」
「うむ」
「やっぱりいたぁああああ!」
あまりの嬉しさに大声を上げてしまい、周りのお客さんが一斉にこちらを振り向く。
「すいやせん……」
頭をヘコヘコさせながら、銀髪クール美少女・ソニアのいるカウンター席へ。
「もしかしたらと思ってラーメン店を巡って駆けずり回っていたが、まさか本当にいるとは……。この島にある一つ星ラーメン店を全部探したんだぜ?」
「ここ以外の二つはさっき食べてきた」
「まさかの三軒ハシゴかよ……。まぁいいや。今日お前を探してたのはだな————」
その瞬間、ものすごく鋭い視線が目の前から突き刺さる。恐る恐る見上げると、
「お客さん。うちの席に座って、何も食わねぇですかい?」
この道何十年のベテラン風なお兄さんが、やや強めの圧力で迫る。
「……ですよね! ここは創作ラーメンでも人気ですよね! えーと、メニューは……これか! どのラーメンにしようかな……あっ! ちょうど暑い中走ってきて疲れてるから、このネバネバとろとろ冷しラーメンをいただけますか!」
「へい! 少々お待ちを!」
自分の注文を終え、ようやくソニアに話し掛けられると思ったが、
「ネバネバ……」
ものすごい怪訝そうな顔でこちらを見ている。
まさしく眉の形が漢字の『八』状態だ。
こんな面白い表情もするんだな。
だが、すぐに表情がもとに戻る。俺も気を取り直して、
「それで話というのはだな————」
「今食事中。話しかけないで」
「オウフ……さいですか……」
こんな感じで、ラーメンを食べてる最中は話しかけることができなかった。
俺の方がラーメンを頼んだのが遅かったが、ツルツルと平らげることができたので、同じタイミングで店を出ることに成功。
「それで話というのはだな————」
「協力の件なら断ると言ったはず」
「別に俺たちはポイントとかに興味なんてないから。俺たちが倒したとしても、お前のポイントにしてあげるよ。だから頼む。俺たちと一緒に戦ってくれ!」
「それは卑怯。私のポリシーに反する」
「意外とプロ根性がすごいな‼」
「ラーメンは一日5食」
「お腹もプロ⁉」
「それに……」
ソニアはまっすぐ俺の目を見つめて、はっきりとこう告げた。
「自分より弱い人間に興味はない。もう話しかけないで」
後ろを振り返って立ち去るソニア。
孤高という言葉がこれでもかと似合うほど、その小さくて静かな背中には、他を圧倒するほどの信念とプライドがヒシヒシと伝わってきた。
悔しいけど、何も言い返すことも追いかけることもできなかった。
しかし、ソニアは急に立ち止まる。
「ポイントの匂い……」
「ポイントの……匂い?」
すると、変身用のヘアピンに内蔵された通信システムで、ダピルから連絡が入る。
「新斗! 聞こえるピ⁉ 悪魔が出たピ! 杏沙と一葉は先に現場に向かっているから、新斗も至急現場に向かってほしいピ!」
「マ、マジか! すぐに向かう!」
通信を終えると、すでにソニアは変身して現場の方向に走り出していた。
もしかして、悪魔が現れたことをダピルより先に察知したのか?
あいつの感知能力とラーメンへの執着はものすごいな……。
いや! 今は関心してる場合じゃねぇ!
俺も遅れを取らないために変身して現場に向かうことにした。
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