【第1章】変身! 見た目は幼女、中身はニート‼
第1話
「……さま、お……さま」
どこからか声が聞こえる。
でも今はすごくいいところなのだ。余計な茶々は入れないでほしい。
地球の平和は俺が守るんだ。
だって俺は……、だって私は……
「だって私は、スーパーヒーローなのだから!」
「ゴフッ!」
なんだ?
何かが拳にあたった感触……、いや、何かを殴ったような感触がする。
そこで、俺は目を覚ました。
辺りを見回してみる。
迫っ苦しい空間。読み終わって雑多に積んだままの漫画。つけっぱなしのパソコンの画面。
そうだ。色々あって、しばらく漫画喫茶に入り浸っていたんだった。
ようやく自分が寝ていたことに気付く。
なんだ……あれは夢だったのか。
でも、この拳の感触の原因はいったいなんだ?
確認してみると、俺の拳を頬に食い込ませたまま顔を真っ赤にしている眼鏡のおじさんが一人。おまけに鼻息も荒い。
どうした? 何か興奮するようなエッティなものでも見てしまったのか?
いや、明らかに違うようだ。
これは、怒りをギリギリのところまで抑えて、今にも噴火寸前といった表情だ。
あふれそうなマグマを表面張力で必死にこぼれないように耐えながら、眼鏡のおじさんは言った。
「お客さま……! 先ほどからお客さまの寝言やイビキがうるさいと苦情をいただいておりまして……。それにその……」
いまだに頬に食い込んだままの拳を睨みつける。見た目に反してマシュマロみたいに柔らかいから、ついそのままにしてしまっていた。
「あはは……。これはすみません。寝言もイビキも気を付けます」
「はい。そうしていただけると大変助かります。ですが……」
「他になにかご迷惑をかけてしまいましたか?」
「いえ……、あの、もうすぐお客さまはご利用終了のお時間となるのですが、いかがしましょうか? ずいぶんと長くご利用いただいて当店としては大変ありがたいのですが……」
「そうですよね! あはは~。延長でお願いします」
すでに前払いで滞在していたのだが、延長をするためには追加で料金を払う必要がある。
急いで財布を取り出して中身を確認。
しかし、財布の中には、10円玉が1枚と1円玉が4枚しか入っていなかった。
「あの……14円であとどのくらい滞在できますかね?」
「お引き取りください」
「えっ? あっ、聞き取れなかったですかね? 14円であとどのくらい—————」
「お引き取りください! もう何日も同じ苦情ばかり聞いておりまして、正直言って迷惑です。それに……」
「……それに?」
「14円じゃ今どきコンビニのレジ横にあるチョコレートすら買えねぇんだよぉぉぉ!」
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